「オタク」市場に関する調査を実施(2023年)~「オタク」の主要14分野のうち、2022年度は10市場で成長を遂げる、成長分野のうち「同人誌」「プラモデル」「フィギュア」3分野の市場規模は、コロナ禍前の2019年度の水準を上回る~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の「オタク」市場を調査し、主要分野における各分野別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、主要14分野の市場規模について、公表する。

1.市場概況

2022年度の「オタク」市場主要14分野(市場)では、10市場(「アニメ」「同人誌」「プラモデル」「フィギュア」「ドール」「鉄道模型(ジオラマ等周辺商材含む)」「アイドル」「プロレス」「コスプレ衣装」「メイド・コンセプトカフェ、コスプレ関連サービス」)が成長した。一方で「トイガン」「サバイバルゲーム」の2市場は縮小という結果になった。「トイガン」は大手メーカー企業の新製品発売が後ろ倒れになったことなどによりマイナス成長に転じ、「サバイバルゲーム」は施設数がほぼ横ばいで推移する中で、特に新規ユーザーの利用が減少するなど多くの施設で集客がコロナ禍前の状況に戻っておらず引き続き市場は縮小した。なお、「インディーゲーム」と「音声合成」は市場定義等の見直しにより、過年度との比較のできない分野である。

成長した10市場の中では、「同人誌」はダウンロード販売が紙媒体のデジタル販売を補完していることに加え、クリエイターの支援を強化したデジタル販売プラットフォームが増えていることなどを理由に好調を維持、また「プラモデル」「フィギュア」はコロナ禍における巣ごもり需要を契機に拡大したが、コロナ禍以降においても縮小に転じることになく好調を維持しており、コロナ禍前の2019年度の水準を上回っている。

一方で「アニメ」「ドール」「アイドル」「プロレス」「コスプレ衣装」「メイド・コンセプトカフェ、コスプレ関連サービス」の6分野は、興行イベント等の開催がコロナ禍前の状況に戻るなどしたが、コロナ禍前の2019年度の市場規模の水準までには至らなかった。

2.注目トピック~「実況系・解説系動画」の人気を背景に「音声読み上げ」ソフトが伸長

2022年度の「音声合成」市場はユーザー消費金額ベースで、213億3,000万円と推計した。「音声合成」市場は主にボーカロイド(ボーカル(歌唱)音声合成)ソフトウェア、音声読み上げ(文字を人声に変換して発声する)ソフトウェア、ボイスチェンジャー(マイクから取り込んだ音声を調整することにより別の声に加工して出力する)ソフトウェアなどの音声合成に関するソフトウェア、及びこれらのソフトウェアに設定されているキャラクターに関連する商品(グッズ)などの物販で構成される。

ボーカロイドソフトは近年サブカルチャー分野で活躍する著名人が過去にはボカロP(ボーカロイドで楽曲を製作する音楽家)として活動していたことから注目が高まっている。コロナ禍では定期的にボカロP向けのオンラインイベントが開催され、イベント内で動画作品を投稿し、各種カテゴリでランキングを競う内容が人気を博すなど、新規ボカロクリエイターの登竜門としても機能している。

音声読み上げソフトウェアは近年人気が高まっているゲーム実況や解説動画、アニメーション制作などに用いられており、作曲が必要なボーカロイドと違って作文だけで動画制作ができることから、クリエイター数はボカロPよりも圧倒的に多いとみられている。2022年度も代表的なキャラクターが誕生し、ソフトウェア販売に貢献した。

ボイスチェンジャーソフトウェアは現時点ではかなり限定された需要向けの商材ではあるが、音声ソフトウェア需要の高まりに伴い、今後も成長が見込まれる。

キャラクターに関連する商品(グッズ)は、ボーカロイドキャラクターの象徴的な存在である「初音ミク」をはじめとする大手事業者が展開するバーチャルシンガーキャラクターが大半を占める。2022年度は特に人気のあるスマートフォンゲームと連携するなど、より幅広い層から支持されている。

3.将来展望

2023年度の「オタク」市場主要14分野(市場)は、コロナ禍以降通期で行動制限が求められなくなったこと等により、13市場(「同人誌」「インディーゲーム」「プラモデル」「フィギュア」「ドール」「鉄道模型」「トイガン」「サバイバルゲーム」「アイドル」「プロレス」「コスプレ衣装」「メイド・コンセプトカフェ、コスプレ関連サービス」「音声合成」)の成長を予測する。

一方、「アニメ」は、通期にわたりイベント等の集客が回復することで、アニメキャラクター関連商品の販売は好調に推移しているものの、外出時間が増加していることにより余暇時間をアニメを見て過ごす人が減少し、これに伴い契約数減少が見込まれるため、大手配信事業者の成長は鈍化することが推測される。加えて、劇場版アニメも前期ほどのヒット作が少なく、TVアニメの新作制作本数も低下する見込みであり、縮小に転じるものとみる。

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