荒廃した土地を「百年の森」に 備長炭原料のウバメガシなど広葉樹を植樹、和歌山・みなべ町

ウバメガシの苗木を植える参加者(17日、和歌山県みなべ町東神野川で)

 世界農業遺産の「みなべ・田辺の梅システム」で重要な役割を果たす森林を保全しようと、みなべ町東神野川の三里ケ峰にある「みなべ百年の森」で住民団体による植樹があった。参加者がウバメガシなど広葉樹の苗木を植えた。

 みなべ町と田辺市でつくる「みなべ・田辺地域世界農業遺産推進協議会」に関係するイベントのプロジェクトチームが主催し、協議会のメンバーや、梅や紀州備長炭の生産者らが参加した。

 みなべ百年の森はもともと、1980年代に民間業者によるサーキット場の建設計画で切り開かれた山林。計画が頓挫して荒れた状態だった土地を町(当時の南部川村)が買い戻し、官民挙げて再生しようと植樹などに取り組んでいる。

 江戸時代から400年以上にわたって高品質な梅を持続的に生産している「みなべ・田辺の梅システム」では、ウバメガシに代表される薪炭林(製炭林)が山を守る役割を担う。炭焼き職人が細い枝を残し、後継樹を育てながら森林の更新を図る「択伐」をすることで斜面の崩落など山が荒れるのを防ぐという。

 プロジェクトチームは百年の森の取り組みに賛同して2019年から植樹を始め、これまでにウバメガシなどの苗木を800本ほど植えた。植えた苗木は大きいもので高さ2メートルほどに育っている。

 今回は枯れたり根付かなかったりした苗木やシカなどの食害を受けた苗木の代わりに、ウバメガシ、イチイガシ、シラカシ、コナラ、イロハモミジなどの苗木110本を補植した。

 チームリーダーの鈴木祐子さん(田辺市秋津町)は「百年の森に木が増えていき、炭が採れるようになってほしい」と話した。

 プロジェクトチームによる植樹は5年目の節目となる今回で最後になる。世界農業遺産推進協議会は今後、植えた苗木の管理や保全活動の周知に取り組むという。

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