肉眼だけで「血液の循環」を突き止めた⁉解剖学の偉人・ハーヴィーがもたらした医学的発展とは?【図解 解剖学の話】

古代の権威と決別した解剖学

ヴェサリウスが自分の手で人体解剖を行ない、その実証に基づいて1543 年に『ファブリカ』を出版してからも、ガレノスの権威はなおも生き続けていました。心臓は、血液を送るポンプであり、押し出された血液が全身を循環すること(血液循環説)は、今でこそ誰もが知る常識です。

しかし、当時の人々は、血液は、全身に張り巡らされた血管のなかを、潮が満ち引きするように行き来するというガレノスの説を信じていたのです。そして、血液循環に関しては、人体を自然のままに探求したヴェサリウスでさえも、ガレノス説を疑うには至っていませんでした。血液循環説の原理を発見したのは、イギリスの医師であるウィリアム・ハーヴィー(1578 ~ 1657)です。

当時のイギリスは、医学の後進国だったため、ハーヴィーはイタリアのパドヴァ大学に留学し、ヴェサリウスの孫弟子にあたるファブリチウスから解剖学を学びました。留学から戻ると、ハーヴィーは臨床医としての腕を上げ、パドヴァから戻って25年後の1628年、『心臓と血液の運動』という書物を出版。

はじめて血液循環説を主張したのです。この本には図が少なく、ヴェサリウスの『ファブリカ』のような解剖図は用いられていません。ハーヴィーが生きていた時代には、顕微鏡が存在せず、動脈と静脈をつなぐ毛細血管の存在を、誰も目にすることはできていなかったのです。しかし、ハーヴィーは、『心臓と血液の運動』のなかで、心臓が血液を送り出すポンプであり、動脈は血液を全身に運び、静脈は心臓に向かって血液を戻す、弁が働いて血液は逆流しない、といった事実を、肉眼的な観察だけをもとに、徹底的に論証してみせたのです。

シリーズ累計300万部を突破した「図解シリーズ」の読みやすさ

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気になる中身を少しだけご紹介!耳はどんなふうに働いて音を感じるの?

空気の振動を電気信号に変換させ聴覚を生む

いくつもの器官を通って脳に辿り着く

耳の最初の役目は、音を集めることで、そのはたらきをしているのは外側に張り出している「耳介」です。耳介は、音を集めるアンテナで形がぼこぼこしているのは、音を正確に聞き取るためだといわれています。音の正体は音波という空気の振動です。耳介で集められた音波は、外耳道を通り、その先にある「鼓膜」にぶつかると、今度は鼓膜を振動させます。振動は、鼓膜の先にある「耳小骨」というヒトの体のなかで最も小さい骨に伝わります。耳小骨の先には、渦巻き状の「蝸牛」があり、振動が伝わると、なかにあるリンパ液が振動し、蝸牛のなかにある有毛細胞をふるわせます。この有毛細胞はピアノの鍵盤のように音程順に並んでいて、感知した振動の内容を電気信号に変換します。それが神経を通って大脳に伝わり、音として認識されるのです。

耳が遠くなるのは、有毛細胞の衰えが原因

年を取っていくと、耳から入った音が脳に辿り着くまでの間に、さまざまな問題が発生するようになります。なかでも耳が遠くなる最大の原因は、蝸牛にある有毛細胞の衰えです。有毛細胞は蝸牛の入口に近いほど高い音、奥に行くほど低い音に反応するしくみになっていますが、どんな音も同じように入口から入ってくるので高い音を担当する細胞ほどダメージを受けやすくなります。そのためヒトは、年を重ねるごとに高い音から聞こえにくくなっていきます。

音波が聴覚に変わるしくみ

①音波が鼓膜に届き、鼓膜が振動する
②耳小骨が鼓膜の振動の力を増幅する
③ふるえが蝸牛のなかを巡り、電気信号に変わる
④電気信号が内耳神経を通って脳に伝わる

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