【連載コラム】第44回:来季もポストシーズン進出を目指すエンゼルス 勝つために必要なものとは?

写真:ミナシアンGMは「勝つためのチーム作り」という方針に変更はないと明言 ©Getty Images

大谷翔平との再契約に失敗し、主砲とエースを同時に失うことになったエンゼルスですが、ペリー・ミナシアンGMは「来季も勝つためのチームを作る」という方針を明言しています。マイク・トラウト(12年4億2650万ドル)とアンソニー・レンドン(7年2億4500万ドル)という2つの大型契約を抱えながらチーム再建に着手するわけにはいかない、というのが最大の理由だと思われますが、ミナシアンGMが独断でチームの方針を決められるわけもなく、おそらくアート・モレノ・オーナーの意向によるものでしょう。

しかし、エンゼルスが所属しているア・リーグ西地区は、今季レンジャーズが球団史上初のワールドシリーズ制覇を成し遂げ、アストロズは7年連続で少なくともリーグ優勝決定シリーズまで進出。マリナーズも3年連続で88勝以上を挙げるなど着実に力をつけています。今季3チームが88勝以上を記録したのはア・リーグの東地区と西地区だけ。今やMLBで最もレベルが高い地区の1つとなっており、大谷の歴史的な活躍がありながらも3年連続で85敗以上を喫しているエンゼルスがポストシーズンに進むのは簡単なことではありません。

では、エンゼルスが2014年以来のポストシーズン進出を成し遂げるためには何が必要なのでしょうか。1つ目は主力選手が故障なく健康にフルシーズンを過ごすことです。大谷が抜けたとはいえ、打線はベストメンバーがそろえばなかなかのクオリティを誇っています。トラウトとレンドンを中心に、ブランドン・ドルーリーやテイラー・ウォードが脇を固め、今季後半戦に打率.318、OPS.961をマークしたルイス・レンヒーフォもいます。彼らが健康にシーズンを過ごして実力を発揮できれば、大谷の穴を完全にカバーするのは難しいとしても、ある程度は埋められるはずです。

2つ目は若手選手たちが期待どおりに成長し、活躍することです。エンゼルスは正捕手のローガン・オホッピー、一塁のノーラン・シャニュエル、遊撃のザック・ネト、右翼のミッキー・モニアックとレギュラーの半数を26歳未満の若手が占めることになります。モニアックと併用される見込みのジョー・アデルもまだ24歳ですし、投手陣に目を移しても、リード・デトマーズ、チェイス・シルセス、ベン・ジョイス、ホセ・ソリアーノなど、多くの若手が重要な役割を担うことが予想されています。同地区の上位球団との戦力差を埋めるためには、こうした若手のなかからブレイクを遂げる選手が複数人出てくることも必要になるでしょう。

そして、3つ目は大谷との再契約失敗で浮いた予算を使って的確な補強をすることです。すでにブルペンにルイス・ガルシア、アダム・シンバー、アダム・コラレックの3投手を加えていますが、これは補強というより「補充」と呼ぶべきでしょう。そもそも足りていなかったブルペンの頭数をそろえただけに過ぎません。大谷に代わるエースの獲得は急務ですし、ブルペンの柱となるようなリリーバーも獲得しておきたいところ。ぜいたく税の基準額までは、まだ7000万ドルほどの余裕があり、モレノ・オーナーに「その気」があれば、ある程度実績がある投手を2~3人は獲得できずはずです。

現在のエンゼルスは、上記の3つがそろってようやく同地区の上位球団と張り合えるレベルだと思います。「すべてがうまく噛み合えばポストシーズンに行けるかも」という状況は、ここ数年変わっていません。オーナーが変わらない限り、この苦しいチーム状況は変わらないのかもしれません。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

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