【リニア】川勝知事の『右腕』が静岡市長に 是々非々やるという難波市長…かつての上司に遠慮なし「部分開業はありえない」 /今年の静岡

静岡・川勝平太知事(1月5日):「私は慨嘆しています。反省しなさい」

年明け早々、ピリついたムードから始まった2023年の“リニア問題”。川勝知事の怒りの矛先は、この人に向けられていました。

新年早々噛みついた相手は『総理大臣』

岸田総理大臣(三重・伊勢市 1月4日):「リニア開業後の東海道新幹線における静岡県内の駅等の停車頻度の増加について、今年夏をめどに一定のとりまとめを行う」

このおよそ1年後、政権が崖っぷちの状況に立たされているとは思っていなかったであろう岸田総理。年頭会見で、リニアの全線開業後に静岡県内の駅に停車する東海道新幹線の本数をどれだけ増便できるか、「夏」という期限を指定して調べる意向を示しました。ところが…。

静岡・川勝平太知事(1月5日):「リニアが開通すれば、のぞみ機能がリニアに移りますからね。ひかりとこだまが多くなるというのは、言われていなくても常識」

川勝知事が言うように、かねてからJR東海側もリニア全線開業後には「のぞみ」のゆとりができることから、東海道新幹線のダイヤを見直すことができる可能性を示唆していました。こうした事情もあり、国からどんな「調査報告」が上がってくるのか、注目されていたのです。

「国にJRのダイヤは決められない」

ところが…。

静岡・川勝平太知事(10月10日):「もう10月です」

「夏」をめどにとされていた調査結果が10月になっても上がらず、川勝知事にも苛立ちの様子が。

そして、この10日後、ようやく事態が動いたのです。

斉藤鉄夫国交大臣(10月20日):「東海道新幹線の静岡県内の列車の停止回数が、現状の1.5倍程度増加するとした場合、静岡県内における停車頻度が増加し新幹線と在来線の乗り継ぎがスムーズになるなど利便性の向上が期待される」

ようやく明かされた調査結果。ただ、この“想像通り”の結果に、川勝知事も黙ってはいられませんでした。

静岡・川勝平太知事(10月23日)
「ダイヤについて国がどうこう決めることができません。それが可能であるかのような発言を、国交大臣、総理がして。初めから本来決定者でないものが、決定できるかの如く1.5倍増えるといったような、見出し躍るようなことになったというのは、国交省としては、いい仕事されたと。なんていい仕事をされているんだろうと思っております」

大井川の水問題は『道筋』が…

リニア全線開業後の話題が注目されるなか、静岡工区の着工に関わる議論も今年は活発に行われました。

静岡・川勝平太知事(11月28日):「大井川利水関係協議会としての意向を見て、これが決定され次第、速やかにJR東海に回答したいと思っている」

11月29日、県は「大井川の水問題の解決策」として注目されていた「田代ダム案」の具体的な実施作について承認。リニアをめぐり「重要課題」の1つであった「水」について、道筋がつけられました。

さらに、今年はこんな“変化”も…。

川勝知事のかつての『右腕』が静岡市長に

川勝知事の“右腕”として、県の理事や副知事を務めてきた難波喬司氏が静岡市長に就任。これまで県の立場で議論してきたリニア問題を、「静岡市」の目線で積極的に発信するようになりました。

静岡市 難波喬司市長
Q.川勝知事と歩調を合わせることはある?

A.「歩調を合わせるという問題ではない。川勝知事がどう思われるか、そして静岡市長はどう思うかの問題で、考え方が一致すれば結果として歩調が合うし、違っていれば歩調は合わない」

かつての部下が静岡市長に就任したことに、川勝知事も期待を寄せました。

静岡・川勝平太知事(4月10日):「難波氏とは長い付き合いだから、従って気心も知れているので、いい関係が作れるだろうと期待している」

Q.副知事の時は知事の部下だったので指示に従うことはあったが、今後は是々非々でやっていくと(難波氏が)言っているが?

A.「それは当然のこと。市長として当然のこと」

難波市長“手加減”せず

実際、難波市長は“手加減”しませんでした。6月、報道陣に送られてきた1枚の“お知らせ”。そこに書かれていたのは、リニアに関する記者説明会の開催について。説明するのは、静岡市の難波市長…ではなく静岡理工科大学の難波客員教授です。

静岡理工科大学 難波喬司客員教授(6月6日):「あくまで、いち技術者として、見解を述べたい」

「市長」と「大学の客員教授」という“二刀流”の難波市長。この日、記者たちに向けた“特別講義”で用意したのは…。

「ダイコン」です。

難波客員教授「なるべく視覚的に分かるように…」
記者「ホンマにダイコンなんだ。ホンマにダイコンなんだ」
難波客員教授「ダイコンですよ」

ダイコンを南アルプスのトンネルに見立てて、自身の見解を披露したのです。

静岡理工科大学 難波喬司客員教授:「私は断面で見ている。JR東海と県は側面で見ている。そこで全然見方、議論の土俵が違うということ」

当時、川勝知事が否定的な立場を示していた山梨県内でのボーリング調査を、静岡との県境まで進めてもほとんど水は出ないと主張。県との考えの違いを明確にしました。

さらに、ここに来て改めて注目されている“あの議論”についても…。

川勝知事の「部分開業論」に…難波市長「ありえない案」

静岡市 難波喬司市長(12月22日):「そんな関係ないわけですよ、静岡県には。なんでそう言うんですかということは、私はちょっとわからない。企業の経営に関係ない者が『部分開業がいいです』とか、そんなことを言う話ではない」

静岡・川勝平太知事(10月):「これ大きなビッグイフですけど、(私が)JR東海の意思決定者であれば、川勝とひざを突き合わせて、その場で解決策を出せる自信はあります」

10月に川勝知事が示唆した「リニア問題の解決策」。先日閉会した県議会でもこれに注目が集まりました。

自民改革会議 中田次城県議(12月12日):「解決策とは何なんだ!十分な答えをしていると思いますか?」

静岡・川勝平太知事:「意思決定者は私ではありません。従って、私がそれ(解決策)を言うのは失礼にあたる、というか資格がない」

議場からの声「失礼じゃないよ!」

具体的な言及を避けた川勝知事。そして、議長からの再答弁の指示によって、再び“あの考え”を口にしたのです。

静岡・川勝平太知事:「開通できる状態になった部分から開通させるということが営業実績となり、解決策になると考えている」

議場からの声「どこが解決策なんだよ!」

去年「部分開業は出来ないと分かった」と発言していた川勝知事が、1年の時を経て再燃させた「部分開業論」。ただ、去年と1つ違ったのは難波市長の存在でした。

静岡市 難波喬司市長(22日):「常識で考えて、部分開業で採算が取れるわけがないと私は思っていますので、そんなことをすると赤字がものすごい金額の赤字が出るわけですから、ありえない案だと思っています」

川勝知事…リニアは単なる「営利事業ではない」

“身内”からも「苦言」が出るようになった2023年のリニア問題。26日、川勝知事がこの1年を漢字一文字で振り返りました。

静岡・川勝平太知事(12月26日):「令和5年、今年は“脱”の年になった。リニアは名古屋まで2027年に開業するというJR東海、事業主体のほうから(2027年以降)に変更になった、これも2027年のくびきからの“脱”といっていいかと」

リニアの開業時期が2027年から2027年“以降”に変更されたことに触れました。そのうえで、難波市長の発言を引き合いにチクリ。

静岡・川勝平太知事:「ある民間企業がやっている営利事業なら違うが、これは国家が認可した全国新幹線鉄道整備法のもとで行われている。これは危機管理の話でもある。もうかる、もうからないという話なら、それは国家的とか、(財政投融資を)3兆円も30年間も無利子でということはあり得ないでしょう」

今年最後の会見でも“川勝節”が炸裂したリニア問題。来年は川勝知事の“言葉”に、さらに注目が集まりそうです。

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