【大分】建物の壁などに絵を描くウォールアートが、大分市中央町のおくの細道ビルの通路壁面に完成した。手がけたのは神奈川県を拠点に活動するアーティストRyu Ambe(リュウ・アンベ)さん(34)。近隣の商店主や料理人、住民らと言葉を交わす中で生まれたカラフルでユーモラスな作品だ。
イタリア料理やカレー、バーなど飲食7店が軒を連ねるビル。相生(あいおい)町と呼ばれる飲食店街と若草公園をつなぐ通路の壁面(高さ約2.3メートル、幅約45メートル)をペンキで鮮やかに彩った。
両側の入り口に「旅したことはある?」を意味する英語。海や森、街へと場面は移り変わり、アメリカンコミック調のオリジナルキャラクターが次々と現れる。「想像すればどこへでも行ける。殺風景な空間を明るく、楽しい気分で歩いてほしい」と思いを語る。
アルバイトをしながら創作活動をしていた2016年、地元茅ケ崎市の駅前通りに描いた壁画が話題になり依頼が舞い込むように。ポップでキュート、風刺の効いた作風が魅力。大手服飾ブランドとのコラボ商品や大型音楽フェスの公式グッズも手がけている。
父方の祖父が日出町出身だった縁で今年5月、町内で初個展を開催。観光親善大使「ひじまちアンバサダー」に就任した。
今回は大分市の事業「アートを活(い)かしたまちづくり」の一環。今月9~18日の10日間、別府市の親戚宅から通って制作した。別府湾や高崎山の風景、イタリア料理店シェフの飼い猫、毎日見学に訪れた住民、酔客の姿も作品に取り入れ、物語を紡いだ。
相生町商店街振興会の藤野幸嗣会長は、制作の様子を交流サイト(SNS)で紹介し「大分はニューヨークより面白くなるかも?」とつづった。撮影スポットになりつつあるという。
「街なかが楽しくなる試み。知る人ぞ知る飲み屋横町に、こんなに都会的で楽しい作品が!?という驚きがあっていい」と喜ぶ。
菅章大分市美術館長は「歩くごとに場面が展開する、まるでワンダーランド」と評した。
アンベさんは「僕にとって絵を描くことは人とコミュニケーションを取り、社会とつながること。地元の皆さんに喜んでもらい自信になったし、アイデアの引き出しも増えた」。
来年から神奈川と大分の2拠点で活動を始める。