長崎IR不認定 資金調達の「壁」越えられず 再挑戦はハウステンボス次第か

長崎IR誘致の歩み

 長崎県が誘致を目指したカジノを含む統合型リゾート施設(IR)計画は、不認定に終わった。経済活性化の起爆剤として「地方型IR」をアピールし、国家プロジェクトの審査に挑んだが、最後まで資金調達の“高い壁”を乗り越えられなかった。国の追加公募があれば、再挑戦できるが難題もある。
 10月26日、東京都内。長崎IRの県担当者と事業者は、国の審査委員会によるヒアリングに臨んだ。繰り返し問われたのは「資金調達の確実性」。翌月16日に再び呼び出されると、事業者の運営能力なども問われた。「(委員と)意見がかみ合わない」。県関係者は一抹の不安を拭えなかった。
 懸念は現実となった。「資金調達の確実性を裏付ける根拠が十分とは言い難い」-。国が27日発表した結果は、審査の基本的な要件「要求基準」すら満たせず、優れた内容かどうか採点する「評価基準」にまで至らないという、厳しい宣告だった。
 総事業費4383億円。外資系の大手金融機関や投資ファンドから広く資金を集めるスキームを組み立てた。県は出資企業や金融機関から計5千億円超のコミットメントレター(出資・融資の意思表明書)などを集めたとするが、審査ではここに疑義が生じた。
 長崎IRの運営を担う特定目的会社「KYUSHUリゾーツジャパン」の大屋高志社長は「われわれの資金調達の方法は世界のIRでは一般的。そこを理解してほしかった」と不満を漏らす。県IR推進課の小宮健志課長も「国に引き続き説明を求めたい」とした上で、行政不服審査請求も視野に佐世保市などの関係者と対応を議論するとした。

本県のIR区域整備計画で誘致先となっていたハウステンボス=2020年4月、佐世保市

 一方、4月に認定された大阪府・市は、米大手MGMリゾーツ・インターナショナル日本法人とオリックスを中心に1兆円規模の計画を作成。出資企業名や金融機関名を明示していた。
 IRに詳しい静岡大の鳥畑与一教授は、長崎IRのレターを公表せず計画を申請した県の進め方を問題視。多額の公金を投入した点も踏まえ「第三者による検証が必要だろう」と指摘する。
 IR整備法は最大3カ所まで整備できると規定。国は7月から、全国に関心を持つ都市がないか水面下で聞き取りを始めた。国が追加公募をすれば、本県も再申請する道はある。
 ただ、誘致先のハウステンボス(HTB)が2019年に県や佐世保市と締結した用地売買に関する基本合意は、「IR事業が認定を受けなかった」場合に失効する。HTB経営陣の顔触れも当時と変わり、理解を得られなければ、県は別の誘致先を探すことになる。県内のIR関係者は「環境は大きく変わった。再挑戦のハードルは高い」と厳しく受け止めている。

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