【ウインターカップ2023】東山のスーパールーキー佐藤凪が語る3年生への思い

「最後は3年生と一緒に優勝したかった」

普段は茶目っけある笑顔を見せるNo.13佐藤凪が、いつになく暗い表情でうつむき、その目にはうっすらと涙がにじんでいた。

ウインターカップ準々決勝で福岡第一と対戦した東山は、試合のほぼ全ての時間帯でリードを取っていたが、4Q残り25秒で逆転を許し、71-74で敗退が決まった。福岡第一にとっては劇的な、東山にとっては悲劇としか言いようがない結末だった。

福岡第一の選手たちが喜びを表現する姿を佐藤は見つめるしかなかった。

田臥勇太と同じ横浜市の大道中出身で、昨年の全中では50得点を奪った試合もある。その後、横浜ビー・コルセアーズU15ではチームをJr.ウインターカップ準優勝に導き、東山に入学すると、すぐさまスターターとして起用。No.4佐藤友、No.5瀬川琉久と並んで“東山の三銃士”と呼ばれるまでになった。

この試合でも東山のファーストポイントを記録したのは佐藤だった。しかし、その後はなかなか思うようなプレーをさせてもらえず、トータル8得点にとどまった。振り返ると、今大会は初戦となった桜丘との2回戦で10得点、帝京安積との3回戦で7得点、そして福岡第一戦は8得点と本来の持ち味である得点力が封じられた。各試合で要所の活躍は見せたものの、フィールドゴールは3試合で9/26の34.6%と、佐藤としては到底納得できるものではないはずだ。

「本当に何もできなかった」

そんな言葉が漏れた。「友さんと琉久さんと3人で注目されて、夏の悔しさを経てもっとやらなきゃと思って大会に臨んだんですけど、全てが足りなかったです。インターハイでは僕のことをスカウティングしてくるチームがあまりなくて、自分の力を出せる試合もありました。でも、徐々にマークされるようになって、冬はマークがよりキツくなることも分かっていたのですが…改めて高校バスケのレベルの高さを感じました」

大きな壁にぶち当たったウインターカップだった。

だが、佐藤が涙を浮かべていたのにはもっと他の理由がある。それが、1年生の自分を温かく迎え入れ、認めてくれた先輩たち、特にキャプテンNo.4佐藤友への思いだ。

「友さんは僕にとってお兄ちゃんみたいな存在で、時には厳しいことも言われましたが、僕が下を向いてしまったときには必ず声をかけてくれたり、ずっと支えてくれました。最後は3年生と一緒に優勝したかったです」

1年生にしてチームを背負い、周囲の期待とプレッシャーに押しつぶされそうになったこともあっただろう。そんなときに支えてくれたのが先輩たちで、彼らがいたからこそ、佐藤も思い切りよくプレーできた。

だからこそ、「申し訳ない」という言葉がこぼれる。

「去年、今の3年生が悔しい思いをしてきた中で、その思いを持って練習からずっと僕らを引っ張ってくれました。それなのに何もできなかった。友さんに対しても、支えてくれたほかの3年生に対しても申し訳ないです」

この取材中、佐藤の口からは、ついにポジティブな言葉が出てくることはなかった。

だが、彼の高校1年目は誰が見てもすばらしいもので、先輩たちも必ず誇りに思ってくれているはずだ。1年後にまたこの舞台に戻り、今度は勝つ。それが、先輩たちへの何よりの恩返しになる。


「SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会」
(略称:SoftBank ウインターカップ2023 / ソフトバンク ウインターカップ2023)
■開催期日:2023年12月23日(土)~29日(金)
■会場:東京体育館(A,B,C,D,Mコート / 東京都渋谷区千駄ケ谷1-17-1※メイン会場)、武蔵野の森総合スポーツプラザ(E,F,G,Hコート / 東京都調布市西町290-11※サブ会場12月23日のみ)
■出場校:男女各60チーム(計120チーム)

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