実効性なお課題山積 茨城・東海村広域避難計画 県・国調整や住民周知

日本原子力発電東海第2原発(奥中央)周辺には多くの住宅が密集する=東海村

日本原子力発電東海第2原発の過酷事故発生に備え、茨城県東海村が27日公表した広域避難計画は、実効性を高められるかが大きな課題となる。避難に必要な車両の確保をはじめ、県や国との調整が多く残る。住民への計画の周知も重要だ。村は「今後も不断の見直しを行う」というものの、取り組むべき事項は多い。

事故発生時、住民は原則マイカーで同県内の取手、守谷、つくばみらい3市に避難する。移動手段がなかったり、自力避難が困難だったりする場合、バスや福祉車両で避難する。だが、県が担うこれらの車両や運転手確保の見通しは立っていない。

国や県との調整が必要な事項は多い。避難経路の渋滞や道路が損壊した際の交通規制・誘導、複合災害への対応、避難先3市も被災した際の新たな避難先の確保などだ。山田修村長は「国、県には課題について議論し、解決策を具体的に示してほしい」と訴える。

住民への計画周知も求められる。村は今回、「原子力災害に備えた村住民避難計画」として公表した。この中で、東海第2の広域避難計画と合わせ、村内にある試験研究炉などの事故に備えた「屋内退避及び避難誘導計画」も盛り込んだ。

東海第2で過酷事故が起これば住民は即時避難する。だが、試験研究炉の場合、まずは屋内に退避し、その後に避難する。避難場所も東海第2とは異なる。村は「発災施設ごとに初動や避難先が異なることを理解してもらいたい」と強調する。

計画の実効性が問われる対象には、自力避難が困難な高齢者や障害者ら「要支援者」がいる。一人一人の避難手順などをまとめた「個別避難計画」は、2021年施行の改正災害対策基本法で作成が自治体の努力義務となった。村は在宅で1人暮らしの住民を対象に作成に取り組む。

村地域福祉課によると、11月22日時点で86人が登録されているが、作成済みは29人にとどまる。同課は民生委員らと協力しながら支援が必要な人を随時把握し、作成を進める方針だ。

山田村長は「計画策定後もよりよい計画になるよう努める」とした上で、「県や周辺自治体と連携した広域的な訓練も必要。村単独では限界がある」と述べた。

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