2023スポーツ名場面回顧 秋季高校野球準決勝関根学園-日本文理戦 サヨナラ機逸し延長惜敗  スクイズせず強攻選択

秋季大会準決勝、日本文理―関根学園、関根学園は九回裏無死一塁、6番谷島が右翼フェンス直撃の同点三塁打を放つ。中央奥で見つめるのは安川監督

秋季高校野球県大会準決勝で関根学園が日本文理と大熱戦を演じた。過去、何度も行く手を阻まれた宿敵を相手に九回裏に追い付き、なおサヨナラのチャンスだったが生かせず、延長十回タイブレークの末に敗れた。九回裏無死三塁でスクイズせずに強攻を選択し、勝利を決められなかった。安川巧塁監督(31)は自問自答を続け、悔しさを胸に、冬期間に底上げを期する。その後の北信越大会では高岡商(富山)に勝つもベスト8で敗れた。

日本文理とは昨年秋の4回戦以来の対戦。その時は打撃戦となり5―9と敗戦。最終回に本塁打を放った谷島優輝(2年)がこの試合もポイントゲッターになる、と安川監督は見ていた。

試合は三回に1点を先制された後、先発鈴木興丞(1年)、六回途中からリリーフの佐伯大和(2年)が踏ん張り、0―1の1点ビハインドで九回裏を迎えた。

先頭の5番片桐優(2年)が右前にうまく運び出塁。代走の切り札・安藤将慶(2年)を一塁走者に送った。打席には6番谷島。この試合はそれまで2打数1安打1四球。安川監督は「外の球が見えていない」とみて、3球目にヒットエンドランを仕掛けた。

高めの球を切るように打った打球は右翼ポール際フェンス直撃の三塁打。思わずベンチも応援席も「入れ」と祈った一撃だった。同監督は「たたきつけた分だけ、バットがボールの下に入った。普通に打っていれば入っていただろう」と振り返る当たりだった。

代走の安藤がかえり1―1の同点に。なお、無死三塁という絶好のサヨナラ機だった。

そこで、文理ベンチはタイムを要求。指揮官には当然、スクイズが頭をよぎった。バントのうまい控え選手が三塁コーチとベンチにいた。代打も考えたが、「バッティングで入れている」という7番大平慈温(2年)の打撃に賭けた。前進守備なら抜けると信じた。

フルカウントから打った打球は跳ねて前進守備の遊撃手のグラブに。遊ゴロで一死となった。人工芝のエコスタジアム新潟なら、高く弾んで頭を越していたと思われる。

一死となり、相手はよりスクイズを警戒してくる場面。8番佐伯の2球目に偽装スクイズのサインを出した。三走谷島がスタートを切って止まり、佐伯がバントの構えからバットを引いた。ランナーを見ながら相手投手は警戒し、やや外した。

カウントは2ボールと打者有利に。佐伯は打力もあった。「見たら打てますよという顔をしている。佐伯なら打てると思った」。カウント2―1(2ボール、1ストライク)からの4球目はタイミングが合ったが、バックネットへのファウル。惜しくも捉え切れず、5球目にストレートを空振り三振した。

9番の正捕手・西戸航希(2年)には代打、田村春(2年)を送った。「勝負と思った時に、代打要員で入れている田村に託した」。普段からの真面目な練習姿勢も買って、ここぞの場面で起用した。だが、フルカウントから見逃し三振に倒れ、勝ち越すことができなかった。

無死一、二塁から始まる延長十回タイブレークに突入した。相手は5番から始まる打順。当たっていないとみて「タイブレークの守備練習でしてきたバント警戒のシフト。この時もプレス(前進)をかけたが」、バントの構えすらしなかった。警戒し過ぎて4球続けてボールとなり、無死満塁に。続く代打に右中間突破の走者一掃三塁打を浴びた。

「僕と相手の鈴木監督の思惑が違っていた」と反省し、勝ち越し打について「ヒットならしょうがないと思っていたが、走者一掃は痛かった」。続く打者にも右翼に三塁打され、4点を献上した。十回裏は無死一、二塁で1番から始まったが、点差もあって「練習してきた」バントができずに無得点に終わり、1―5で敗れた。

無死三塁サヨナラ機の場面。スクイズか打たせるか、後日、球場で会った佐藤和也新潟医療福祉大野球部総監督(元新潟明訓監督)や、他校ベテラン監督らに尋ねた。佐藤さんからは「下位打順だし、周りは何でスクイズしないんだと言う。その打者がバントがうまいか下手かなんて知らない。考えてサインを出しているなら、それでいいんだ。びびって出さないのは駄目。覚悟を決めてやれ」と指摘されたという。

「九回裏は一球一球考えた」という安川監督。これからの飛ばないバットへの移行を見据え、「バントやバスター、エンドランなどがより重要になってくる」とし、芯に当てる技術と合わせ、細かい野球の習熟を目指していく。

▽準決勝(9月23日、三条パール金属スタジアム)

日本文理

001 000 000 4|5

000 000 001 0|1

関根学園

(タイブレーク延長十回)

(日)丸山、倉石―黒崎

(関)鈴木、佐伯―西戸、池田

▽三塁打 谷島(関)小川、才須(日)

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