自発的な学びへ、宿題出しません 新庄・日新小が今春から、児童が選択

廊下の家庭学習コーナーで自主学習用のプリントを取る児童たち=新庄市・日新小

 新庄市日新小(浅井純校長、517人)は今年4月から、宿題をなくした。家庭学習の在り方を変え、児童の主体的な学びにつなげるのが狙い。代わりの教材として家庭学習用プリントを廊下に並べ、児童が学びたい教材を選択できるようにしている。保護者からは賛否両論の意見が寄せられているが、児童の自主的な学習や教員の働き方改革につながっているという。

 同校は毎日の宿題を出さないようにしたほか、長期休みにおさらい帳は配布するものの、提出と教員による点検を廃止した。自由研究や読書感想文なども任意とした。今年の冬休みも同様の対応を取っている。

 家庭学習用プリントが並ぶコーナーでは「きょうは漢字を勉強するよ!」「一緒にプリントやろう」といった児童の声が響く。5年生の児童は「宿題に追われないので気持ちが楽になった。自分で課題を考えて取り組むのが楽しい」と笑顔を見せた。

 宿題を出さない試みは、子どもの自尊心を傷つけたり、勉強や学校を嫌いになったりしないように、との狙いがある。昨年まで宿題を提出できず、毎日のように涙を流していた中学年の児童も、今年は「学校が楽しい」と笑顔で過ごしているという。教員の労働環境改善にも寄与し、宿題の添削や未提出への指導といった時間を授業内容の充実化に充てている。

 1学期末の保護者アンケートでは「少しずつ自分で家庭学習に取り組めるようになり、楽しそう」という賛成意見の一方、「全く勉強しなくなった」などの厳しい指摘もあった。同校は家庭学習の悩みを児童と教員が話し合う相談会を開き、その内容を保護者に報告するなどして、取り組みへの理解を求めている。

 浅井校長は「宿題で知識を習得することはできるが、作業になってしまいがちだ。学習指導要領が求める主体性や思考力を培うことは難しい」と話す。本物の学力を身に付けるためには児童が自分の意思で教材を選び、取り組むことが重要だとし「教員は児童に家庭学習のやり方を身に付けさせ、保護者も児童が自発的に勉強に取り組む環境づくりに目を向けてほしい」としている。

指導要領改定受け、在り方変える動き

 2020年度から全面実施された現在の小学校学習指導要領は、主体的な学びが強く志向されている。中井義時山形大名誉教授(66)=元県教育次長=は、学習指導要領の全面改定を受け、家庭学習の在り方を変える動きが出てきていると説明。全国では、鶴岡市出身の工藤勇一さんが校長だった時に宿題を取りやめた麹町中(東京)などがある。

 児童が自分で教材を選ぶ日新小の取り組みについて、中井名誉教授は宿題の提出で学習状況を判断できず、教員、保護者の指導が難しくなる面はあるとする。児童が自ら考え、行動する力を得るためには非常に効果的だとし「保護者の理解が深まることでより良い成果が出るはずだ。今後、同様の取り組みが増えるのではないか」と話す。

 「宿題」という文言は、小学校学習指導要領の本文にはない。指導要領の解説総則編第3章で、家庭学習の指導例として「宿題や予習・復習など家庭での学習課題を適切に課すなど、家庭学習も視野に入れた指導を行う必要がある」と記載されている。文部科学省初等中等教育局教育課程課の担当者は「宿題はあくまで学校ごとの取り組みだ」としている。

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