<ライブレポート>城田優の初演出で、めくるめく楽しさと感動のあるコンサートに 来年の全国ツアーに期待(12/24東京公演)

12月3日の兵庫公演に続き、【Billboard classics×SNOOPY『Magical Christmas Night』】東京公演が、12月24日、昭和女子大学人見記念講堂で開催された。

スヌーピーのオーケストラコンサートがシリーズ4作目を迎えた今回は、これまでゲストボーカルとして出演してきた城田優が、演出とメインパフォーマーを担当。タイトルも新たに【Magical Christmas Night】と改称し、【ファントム】をはじめ数々のミュージカル作品を演出してきた手腕で、より華やかで楽しく、なおかつ胸に迫るコンサートを創り上げた。

本番前に開かれた取材で城田は、自身の演出について、「ミュージカルでもショーでも、日常を忘れてその世界に没入していただくのが一番のテーマ」と語っていたが、ステージは一見しただけでそのこだわりが伝わってくる。上手には雪だるま。下手には赤い屋根のスヌーピーのドッグハウス。中央後方の大きなクリスマスツリーにはプレゼントの箱などが飾りつけられている。美術家の松井るみによるその美術セットは、「スヌーピーたちが住む世界で行われる夜の音楽祭」というコンセプトのもと、出来上がったもの。確かに美術だけでもその世界に入ったワクワク感があり、森に住む鳥たちの鳴き声まで聞こえてくる。開演直前まで写真撮影を可能にしていたのも気持ちを上げてくれた要因だ。観客は自分自身や持参したスヌーピーのぬいぐるみを入れて撮影するなど、始まる前から大いに楽しんでいる。

幕が開いてからもワクワクは止まらなかった。栗田博文の指揮で、東京フィルハーモニー交響楽団と、音楽監修も務めるピアノの宮本貴奈、ドラムスのジーン・ジャクソン、ベースのパット・グリンのジャズピアノトリオの演奏が始まる。すると、クリスマスツリーに飾られていたプレゼントの箱に、スヌーピーたちの映像が映し出されたのである。箱だと思っていたのはなんとLEDパネルだったのだ。前半はスヌーピーにまつわるジャズの名曲が次々に登場したが、たとえば「Skating」では本当にスヌーピーたちがスケートをしたり、曲に合わせて変わる映像が演奏を盛り上げる。

また、オーケストラのメンバーが森に合わせてグリーンの衣装をまとっているのも、城田演出のこだわりのひとつ。さらには、照明の変化にも驚かされた。曲によって様々に色が変化するのはもちろんのこと、雪が降ったり、星がきらめいたり、客席の天井や壁を彩ったり、光の演出もまた、没入感を高めてくれる。

楽しいジャズメドレーのあと、いよいよホストとメインボーカルを務める城田が登場する。「Just like me」をはじめとするスタンダードナンバーを歌うなか、今回の目玉として用意したのが「真夏の果実」だ。「クリスマスは冬のイメージがあるけれども、世界を見ると、真夏にクリスマスを迎えるところもある」と、このサザンオールスターズの名曲をクリスマスアレンジ。しっとりと情熱的なその歌声で観客を魅了した。

続いて、東京公演のゲストボーカル、清水美依紗の登場である。清水は、城田が山崎育三郎、尾上松也と組んでいるユニット「IMY」が企画した舞台で初舞台を踏み、その後、数々のミュージカルでその実力を発揮している注目の存在。自身の曲「Home」など2曲で力強い歌声を披露する。城田とのトークタイムではかわいらしい素顔に笑いも起き、ふたりでデュエットしたクリスマスメドレーは、歌というものの豊潤さを一層感じさせてくれた。そこにさらにクワイアが加わったのもクリスマスらしい演出だ。子どもたちの歌声が清らかに響いて心に沁み入る。

スヌーピーが参加する場面では会場が沸いた。なかでも城田が歌った「Let it snow」では、スヌーピーと城田が一緒に踊り、スヌーピー自ら、雪合戦をする振りをアドリブで入れたりも。客席への投げキッスに、観客も歓声を上げながらお返しをしたり、温かな交流が生まれるのもこのコンサートならではだろう。

本編の締めくくりには、城田と音楽監修の宮本が書き下ろした新曲「夢の種~I’ll be by your side~」が披露された。歌の前に城田が熱く語った「誰でもいくつになっても、夢を持っていいと思う」という言葉とともに、歌詞の一つひとつに励まされる。とくに、タイトルの副題にもある「I’ll be by your side」は、スヌーピーたちや、城田らステージ上のパフォーマーが、私たち一人ひとりを応援してくれているようでもある。そして、このステージのラストソングとなったアンコール曲「Happy Xmas (War Is Over)」が世界中への祈りのようにも聞こえてきて、最後に大きな感動が湧き上がる。楽しくワクワクするのはもちろん、それだけでなく、生きる力もくれるようなコンサート。【Magical Christmas Night】のタイトル通り、魔法にかかった一夜となった。

Text by 大内弓子
Photo by 石阪大輔

◎公演情報 ※終演
【billboard classics×SNOOPY『Magical Christmas Night』】
M1 Overture(スヌーピーメドレー)Christmas Time Is Here / Christmas is Coming / Linus & Lucy
M2 Skating
M3 そりすべり(Sleigh Ride)
M4 Benjamin
M5 Just like me
M6 Let it snow
M7 真夏の果実
M8 Christmas is Coming
M9a【兵庫】恋におちたら
M9b【東京】HOME
M10 Promise
M11 洋楽クリスマスメドレ- Winter wonderland / Silent Night / Santa Claus is Coming to Town
M12 メリクリ
M13 夢の種~I'll be by your side~
EC1 Christmas time is here
EC2 Happy Christmas

2023年12月3日 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール ※終演
2023年12月24日 昭和女子大学 人見記念講堂 ※終演

出演・演出:城田優
ゲストボーカル:
【兵庫】Crystal Kay
【東京】清水美依紗
指揮:栗田博文
ピアノ・音楽監修:宮本貴奈
ドラムス:ジーン・ジャクソン
ベース:パット・グリン
管弦楽:
【兵庫】日本センチュリー交響楽団
【東京】東京フィルハーモニー交響楽団
編曲:
宮本貴奈
萩森英明
岩城直也
舞台スタッフ:
松井るみ(美術)
澁谷賢治(照明)
牧嶋康司(音響)
西田淳(映像)
大澤裕(舞台監督)

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