偉大な経験、未来へつなぐ 奄美の日本復帰70年=奄美市おがみ山で市民のつどい

「日のもとのはた、日のみはた、今ぞわが手に/朝はあけたり、さえぎるものなく」。奄美群島の日本復帰70年を迎えた12月25日、鹿児島県奄美市名瀬のおがみ山公園で「市民のつどい」があった。復帰の歴史伝承に取り組む6団体が主催し、小学生から復帰運動体験者まで約70人が参加。復帰の父・泉芳朗氏の胸像に献花し、強い意志で復帰を成し遂げた島の誇りと継承の決意を胸に、復帰祝賀の歌「朝はあけたり」の歌声を同公園に響かせた。

記念碑と国旗を背に、復帰祝賀の歌「朝はあけたり」を高らかに歌う才田一男さん(右)ら市民のつどい参加者=12月25日午前、おがみ山公園

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2016年から市民が中心となり毎年実施する集会。今年は23日に同公園を出発した「奄美大島一周たすきリレー」のゴールを祝福し、午前10時に開会した。

冒頭あいさつで「奄美群島の日本復帰運動を伝承する会」の安原てつ子副会長(70)は復帰の歴史に触れ「語り継いでいかなければならない、今は平和への長い旅の途中にある」と表現。参加者も70年の節目の日を迎え、それぞれの思いを語った。

奄美市名瀬の才田一男さん(85)は復帰の日を振り返り「『僕たちは日本人になったぞ』と万歳した夜のことが鮮やかに思い浮かび、涙が出る」と当時の喜びをかみしめた。今年7月、日本復帰に懸けた「密航陳情団」の思いを受け継ぎ、十島村宝島から鹿児島市まで人力カヌーで縦断した同市名瀬の白畑瞬さん(38)は「旅を通じ体全体で受け止めた思いを、未来の子どもたちへどうやってつないでいくか。それは僕たちの宿題」と決意を示した。

駒澤大学の須山聡教授は「何のために復帰を語り継ぐのか。『復帰』は沖縄では『今の問題』だが、奄美では思い出、昔話になりつつある。過去の話に封じ込めてしまっては、語り継ぐ意味がないのではないか。奄美が抱える課題にどう立ち向かうか。考えなければ行けないときだ」と参加者へ語り掛けた。

集いは参加者全員で万歳三唱し、締めくくった。泉芳朗を偲(しの)ぶ会の楠田哲久会長(76)は「奄美には日本復帰という偉大な『経験』がある。子どもたちにはその経験の上に、飛躍して行ってほしい。復帰のその日を忘れないために」と話した。

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