年の瀬、消える古都の銭湯 客高齢化、燃料高騰も打撃

 京都市南区で創業から約70年続いた銭湯が大みそかに閉店する。燃料高騰や地域の高齢化など、巡る時代の中で店じまいの決断をした銭湯を訪ねた。

 JR京都駅から南東へ約1キロ、その銭湯は狭い路地の奥にひっそりとたたずんでいた。屋号は「松湯」、のれんをくぐると昔ながらの番台から店主の若林作さん(78)が「いらっしゃい」と迎え入れた。れんが模様の壁や年季の入ったロッカーがある脱衣所では、演歌が流れる。元日を除いて年中無休で、時が止まったような場所だった。

 決心したのは今年。新型コロナウイルス禍で少しずつ遠のいた客足は、元には戻らなかった。客の多くは地域の高齢者。若林さんは「1人減り、2人減りと、ここ1、2年で20人くらい常連さんが来なくなった。毎日が赤字になって、従業員の月給がもう出せへん」と話した。

 湯を沸かすための燃料の高騰も打撃だった。資源エネルギー庁が公開している銭湯などに使われる燃料のA重油の価格は、2019年10月時点で1リットル約80円だったが、23年は100円前後で推移している。松湯の燃料代は月に約50万円。日に訪れる客は60人ほどで、経費を賄うことはできなかった。老朽化もあり閉店を決めた。

 営業終了まで残りわずか、40年通うという常連客らは脱衣所でたわいない会話を惜しむように楽しんでいた。若林さんは「また明日も仕事頑張りや」と声をかけ、風呂上がりの背中を見送った。慣れ親しんだ風景が間もなく消えていく。

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