辰の「倉敷はりこ」作り大詰め 「飛躍の年に」一つ一つ願い込め

一つ一つに願いを込め、張り子の制作に励む生水さん

 岡山県伝統的工芸品の郷土玩具「倉敷はりこ」。その技術を代々引き継ぐ職人生水洋次さん(72)=倉敷市=の自宅工房で、来年のえと・辰(たつ)の張り子作りが大詰めを迎えている。ここ数年、新型コロナウイルス禍が地域に暗い影を落としてきた。「来年は昇り竜のように、大きく飛躍する年になってほしい」。一つ一つに願いを込めて作業を進める。

 張り子は高さ9センチ、長さ8センチ。1988年の年賀切手の絵柄に採用された辰のデザインを踏襲し、目や口を大きく開いた愛嬌(あいきょう)たっぷりの表情が印象的。丸みを帯びたフォルムがかわいらしく、見る人の心を和ませる。深い緑色の体に金色でうろこを描き、新年の華やいだ雰囲気も感じさせる。

 7月上旬から制作をスタート。竜の形に削った木型に和紙と洋紙を重ねて貼って天日乾燥。白色顔料と膠(にかわ)を混ぜた塗料で塗り固めた後、水性絵の具で丁寧に色付けしている。

 年末までに450個を作る予定。日本郷土玩具館(同市中央)や晴れの国おかやま館(岡山市北区表町)などに出荷する。

 倉敷はりこは1869(明治2)年に生水多十郎が創始し、一子相伝で技術を継承している。5代目の洋次さんは「手仕事ならではの温かみを感じてもらえれば」と話している。

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