「高岡発ニッポン再興」その122 北区の透明性 学校建設に住民や子どもの意見も取り入れる

出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・東京都北区、小中一貫校を開校にあたり住民と対話を重ねる「透明性」があった。

・高岡市は一部の人が決めるやり方を貫こうとしている。

・開かれた行政の実現が私の最大の使命。

高岡市の高陵小中学校の新校舎建設ですが、学校関係者だけの意見を聞いて基本設計をまとめました。さらにその基本設計を説明したのは、連合自治会の会長ら7人だけでした。前回お伝えしたように、実施設計は今年9月にまとまり、来年4月以降に建設工事が着手されます。住民不在のまま進んでいるのですが、私が2月定例会で質問したからこそ、こうした進捗状況が明らかになりました。不思議なんです。どうしてこんなに隠す必要があるのですかね。

他の自治体ではどうなっているのでしょうか。私はさまざまな自治体に話を聞きましたが、どこも住民との対話姿勢を打ち出しています。例えば、東京都北区です。こちらは、令和6年度に小学校2校と中学校1校を統合し、小中一貫校を開校します。高陵小中学校と同じですね。私は担当者に話を聞きましたが、北区では初めての一貫校だけに、時間をかけって丁寧に住民に説明したといいます。

まずはアンケート調査です。児童・生徒、さらに教職員・保護者などを対象に実施しました。「新しい学校で中学生のおにいさん、おねえさんとどんなことをしたいですか」という質問に対し、小学生では「一緒に給食を食べたい」という回答が一番でした。

こうしたアンケートを踏まえて、平成30年秋に4回ワークショップを開催しました。それぞれの学校のPTA、教職員、地域の自治会の代表ら検討委員会は27人で構成されています。教室の配置や整備コンセプト等をまとめるのが狙いです。

検討会の第1回では、「普通教室はすべてグランドに面して、南向きが良い」などの意見が出ました。第2回は第1回目の意見をもとに、当局は平面図で、2つの案を提示しました。参加者からは「今ある樹木は可能な限り残したい」「渡り廊下はできる限り広くしてほしい」などの声がありました。それぞれのワークショップは2、3時間かけました。また、先進事例の小中一貫校にも視察。4回のワークショップを終え、平成30年12月13日に、住民を集めた報告会を開催しました。

さらに、小学生や中学生が参加するワークショップも3回開きました。子どもたちの声も取り入れたのです。基本設計に関して、学校関係者だけの意見を聞いてまとめた高岡市とはまったく違いますね。各ワークショップの議論の中身などは「改築レター」というチラシに記載され、地域や保護者等に配られています。

また、平成31年2月には、学校敷地から40メートルに住んでいる人を対象に、近隣説明会も実施しました。金曜日の夜6時半からと日曜日の午前10時半からの2回に分けました。できるだけ多くの人に参加してもらうためです。そこでは、新校舎ができることで日影になる地域や時間帯なども詳しく説明しています。

北区は、こうして基本設計について、住民の理解を求めましたが、懸念の声も出ました。「渡り廊下からマンションの中が見えてしまうのではないか心配です」。それに対し、北区側は「実施設計の中で可能な範囲で、樹木や目隠しフィルム等による配慮を検討します」と答えています。

さらに、区議会でも報告しました。区議会での意見も取り入れて、基本設計を修正し、実施設計を作成したといいます。

北区の学校建設は透明性があります。これぞ民主主義ですね。市町村や区は最も身近な自治体です。だからこそ、住民の声を聞く必要があるのです。一方、高岡市は一部の人が決めるやり方を貫こうとしています。こうした「密室行政」は変えなければなりません。開かれた行政を実現することが私にとって最大の使命です。

トップ写真:(仮称)都の北学園の改築(事業中:令和6年4月開校予定)出典:東京都北区公式ホームページ

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