被害者支援 条例化進む 桜川市、茨城町で12月制定 茨城県内

茨城県内で、犯罪被害者支援条例を制定する自治体が目立ち始めた。12月には桜川市と茨城町で県内4、5例目となる条例がそれぞれ成立。市民が犠牲となる重大事件などが起きていない自治体での制定は県内で初めて。2019年の京都アニメーション放火殺人事件以降、全国でも同様の動きが広がっている。

条例は、殺人や傷害など犯罪被害に遭った人や遺族を支援するもの。多くが総合窓口を設置して支援内容を案内したり、見舞金を支給したりして、被害の軽減や回復を図る。

桜川市議会と茨城町議会は12月、条例案を全会一致で可決。いずれも見舞金制度を設けた。

両議会は独自の制度も定めた。桜川市はインターネットによる誹謗(ひぼう)中傷などを二次被害として明示。その上で、二次被害を発生させないよう、被害者の状況を理解し、配慮することを市民の責務として定めた。茨城町は犯罪被害などで自宅に住み続けることが難しくなった町民に、転居時の家賃支援制度を盛り込んだ。

条例を巡っては、常陸大宮市が10年に県内で初めて制定。潮来市は13年、行方市は17年にそれぞれ制定した。いずれも市民が被害者となる殺人事件などを受け、制定の機運が高まった。県央地域の自治体は23年度内にも条例案を議会に提出する方針。

京都アニメーション放火殺人事件では、同じ事件の被害者や遺族にもかかわらず、住む場所によって受けられる支援に格差が生じる問題が起きた。このため、全国の各自治体で同趣旨の条例を制定する必要性が指摘され、各地で取り組みが進んでいる。

22年3月に条例を施行した県は、支援等のための体制整備▽精神的・身体的被害の回復・防止▽損害回復・経済的支援▽犯罪被害者等を支える地域社会の形成-の四つを重点テーマに据えた支援計画を策定。ただ、見舞金支給などは国の犯罪被害給付制度の運用にとどまっている。

いばらき被害者支援センターの関根俊雄さんは、被害者が複数の市町村にまたがる事件が起きる可能性はどこにでもあると指摘し、「居住自治体によって支援に差があるのは望ましくない。各市町村は見舞金支給を盛り込んだ条例制定を急ぐべき」と強調した。

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