毎年のことだけど一年なんてアッという間。すでに師匠も走る年の瀬を迎えていることに驚くばかりだが、冬休みには一年の垢を落として骨休めしたいもの。そこで2023年を振り返る意味も込めて、年末年始にイッキ観をオススメしたい配信作品を紹介します!
Netflix 『ザ・キラー』
イッキ観と言いつつ、初っ端からシリーズものではない単体の長編映画をオススメ。『セブン』(1995年)『ファイト・クラブ』(1999年)の鬼才監督デヴィッド・フィンチャーが、前作『Mank/マンク』(2020年)に続いてNetflixオリジナル作品として新作をリリース。マイケル・ファスベンダー演じるプロフェッショナルな殺し屋が、思わぬ任務の失敗から命を狙われるハメに陥る犯罪スリラーだ。
おのれの殺し屋哲学をモノローグで語り、イヤホンでザ・スミスの曲を聴きながら淡々とターゲットを狙う主人公の姿に、ストイックなプロ意識を感じていたのも束の間、完璧だったはずのミッションがあれよあれよと予想外な方向になだれ込む。
完璧主義者フィンチャーが創り出した緻密でソリッドなフィルム・ノワールであり、別の見方をすればドジな暗殺者の尻ぬぐい旅に付き合うブラックコメディ。特に『ゲーム』(1997年)のねじくれたユーモアが好きな人に猛プッシュします!
アマゾン・プライム・ビデオ 『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』
ベストセラー小説を原作に、1970年代に大人気を博したという架空のロックバンド、デイジー・ジョーンズ&ザ・シックスの結成から解散にいたるまでを綴った音楽ドラマシリーズ。
カリスマ的ボーカリスト、デイジー・ジョーンズを演じたのは現役最高の俳優のひとりで、エルヴィス・プレスリーの孫娘でもあるライリー・キーオ。バンドリーダーで妻子あるビリー(サム・クラフリン)との衝突と恋、“バンドあるある”なメンバー内の軋轢などを絡めて描き出す。
メロドラマとしての新味はないかも知れないが、デイジーとビリーの表現者同士の相性の良さを、奏でる音楽と声と声の絡み合いで表現できていることが、音楽ものとして圧倒的に正義! それぞれに活動していた2人がコラボする第3話以降、音楽が物語をグイグイ引っ張っていくので目と耳が離せなくなりますよ!
U-NEXT 『リハーサル -ネイサンのやりすぎ予行演習-』
人生の大きな決断を前に迷っているひとに、正しい行動や決断ができるように綿密なリハーサルをさせてくれるリアリティショー……のはずが、視聴者を困惑させながら暴走していくカテゴライズ不可能な大怪作。
案内人を務めるのはコメディアン/俳優のネイサン・フィールダー。「友だちに学歴詐称をカミングアウトしたい!」というオジサンには、告白する予定のバーと寸分たがわぬセットを建てて、店に入る瞬間からどんな会話をすべきかまで、あらゆるパターンを想定して何百回となくリハーサル。「子供を育てたいけれど不安」だという女性には、乳児から少年まで子役を大勢用意して、猛スピードで子育ての全プロセスを事前に体験してもらおうとする。
どの企画も完全にやり過ぎだし、本当に役に立っているのかも謎なのだが、ネイサンの偏執的なリハーサルへのこだわりはいつしかネイサン自身も巻き込んで、ラストにはなんでか感動すらさせられてしまう。とにかく毎回「なにやっとんねん!」のオンパレードで、メチャクチャおもしろいのでぜひ。
Apple TV+ 『モナーク:レガシー・オブ・ザ・モンスターズ』
現在アメリカでも『ゴジラ-1.0』が大ヒットしているが、こちらはレジェンダリー・ピクチャーズによるハリウッド版『ゴジラ』シリーズから派生したドラマシリーズ。『GODZILLA ゴジラ』(2014年)のクライマックス、サンフランシスコの壮絶バトルに遭遇した主人公(アンナ・サワイ)が、死んだ父親の足跡を追いかけて日本を訪れ、怪獣研究の秘密機関<モナーク>にまつわる騒動に巻き込まれていく。
モナークといえば、映画版では渡辺謙扮する芹沢博士が所属していた組織。本シリーズではモナーク創設にまつわる過去パートと、創設者の孫世代の現代パートが同時進行。ゴジラの出現によって“怪獣の脅威が当たり前になった世界”が災害やパンデミックのメタファーとして機能しているのも興味深く、映画と遜色ないハイクオリティで毎回怪獣が大暴れしてくれる大盤ぶるまいも豪華。シーズン1の最終エピソードは2024年1月12日に配信なので、リアルタイムで追いかける醍醐味も味わえますよ!