破産のような民事再生=2023年を振り返って(7)

波紋を呼んだ大手メーカーの「破産に近い」民事再生法の適用が注目を集めた。
国内の大手電機メーカーや官民ファンドの(株)INCJ(TSR企業コード:033865507)などが出資する(株)JOLED(TSR企業コード:300600798、3月民事再生法)。2017年12月に世界初の印刷方式有機ELの製品化にこぎつけ、2019年11月には石川県の能美事業所で量産ラインが稼働した。生産率が高く、安価、高精細なディスプレイの量産化を期待された。だが、製品歩留まりは向上せず、工場の固定費などで毎期100億円を超える最終赤字が続き、資金流出に歯止めがかからなかった。増資などで資金を調達したが、ディスプレイ需要の低迷や世界的な価格競争で劣勢に回り、民事再生法の適用を申請した。
債権者説明会などでJOLEDは、工場の稼働はすでに停止し、生産活動は行わないと説明した。一般的に民事再生開始前の債権は、「再生債権」として弁済を受けることができず、開始決定後は通常取引のケースが大半だ。しかし、JOLEDは、申請後に部材納品やサービスを提供しても基本的にすべて再生債権として取り扱われるとした。ある債権者は「これでは破産と同じだ」と吐き捨てた。
また、らくらくスマートフォンなどを展開していたFCNT(株)(TSR企業コード:027062554、5月民事再生法、商号は当時)は、投資ファンド傘下で開発・製造から販売までの一貫したグループ体制を構築していた。しかし、競争激化や円安によるコスト上昇で、赤字が累積して民事再生法を申請した。申請後、FCNTは携帯端末の製造・修理を停止した。そのため、同事業に関連する債権について、民事再生開始決定の前日までの間に発生したものも一部を除いて再生債権として扱うとした。
繰り返される民事再生申請後の納品・サービス提供の再生債権化。申請後、主要事業を同一法人では継続しない「破産のような民事再生」が目立つ2023年だった。

JOLEDの看板(3月)

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