【NISA】働く1万人は何に投資している? 投資を増やしたのはなぜ?

前回のコラム「【新NISA】でどれくらい投資をする? 1万人のデータから浮かび上がるスタンス」では、フィデリティ・インスティテュートが実施した「ビジネスパーソン1万人アンケート」(以下、「1万人アンケート」)の調査結果から、NISAにしぼった内容をお伝えしました。今回は1万人の投資行動全般について浮かび上がった特徴をご紹介していきます。

フィデリティは2010年より、日本全国の会社員と公務員の資産形成や退職準備に関する動向の調査を続けており、今回で10回目。2023年の調査は6月30日~7月7日にインターネットを通じて10,854人を対象に実施。


貯蓄額と投資残高の関係

働く1万人は貯蓄額のうち、どれくらいを投資に回しているのでしょうか。現金・預貯金・証券投資・保険といった金融資産の保有額を「貯蓄額」とします。また、株式や投資信託で保有している金額を「投資残高」として、両者の関係をひとり一人について調べました

図表1 貯蓄額と投資残高の関係

図表1を見てみると、一番下の貯蓄額が100万円未満のゾーンでは、投資残高ゼロ、つまり投資をしていない人が62%いるのがわかります。貯蓄額が増えるにつれ、投資をしていない人の比率は減っていきます。これは皆さんの感覚ともマッチしているでしょう。一番上の貯蓄額5,000万円以上のゾーンでは投資残高も大きくなり、投資をしていない人はわずか8%になります(※1)。

投資額がゼロではない人を投資家と呼ぶことにすると、投資家の比率は1万人アンケート全体で51%でした。男性は53%とこれよりも多く、女性は42%と少なくなります。収入が増えると投資家比率も増えていきます。しかし、年収1,000万円を越えるゾーンでも3割の人は投資をしていませんでした。年齢も上がるにつれ、投資家比率は増えていきます。ただし、Z世代(当アンケートでは20-26歳)、若年層(27-36歳)でも4割強が投資をしているという結果になりました。

(※1)参考までに、「貯蓄額5,000万円以上あるが、投資をしていない」人は39人いました。所在地としては東京、大阪、神奈川が多いです。うち19人がお金に関する情報を「どこからも入手していない」と回答しています。

投資対象

それでは、働く1万人は何に投資しているのでしょうか? 図表2は投資している人に投資対象をすべて選んでもらった結果を世代別に比較したもので
す。

図表2 年代別の投資先

たとえば、日本の個別株式には高齢層(53-64歳)の投資家の64%、中堅層(37-52歳)の55%が投資をしています。年齢が若くになるにつれ、日本の個別株式への投資率は減っていき、若年層では43%、Z世代では33%となります。

これに対して、外国株に投資する投資信託には、Z世代の34%、若年層の39%が投資しており、高齢層の32%より多い数値です。Z世代はSNSを通じて日ごろからグローバルな情報にふれているので、投資先が海外に向かうのも自然なのかもしれません。一方で、運用の知識・経験は少ないせいか、ロボアドや投資一任を使う比率も他の世代より高くなっています。

図表3は投資先の推移を時系列で見たものですが、日本の個別株の長期低落傾向は明らかです。これとは逆に、人気が高まっているのが外国株投信であることがわかります。

図表3 投資先の推移

投資する目的

そもそも、投資をする目的は何なのでしょうか。図表4にあるとおり、高齢になるほど「老後資金をつくるため」が多くなる一方、若い人ほど「資産を増やす」あるいは「特に目的なし」が多いです。「起業資金を準備するため」「社会情勢を知るため」「社会貢献をするため」がZ世代でやや多いのも注目です。

図表4 投資をする目的

投資しない理由

逆に、投資をしていない人にその理由を聞いたのが図表5です。これにも傾向があります。「資金が減るのが嫌」「まとまった資金がない」といった金銭系の理由は男性、そして年齢が高い人に多いことがわかります。「何をすればよいのかわからない」「いろいろ勉強しなければならない」といった知識系の理由は女性、そして若い層に多いですね。

図表5 投資をしない理由

投資を増やした理由 vs 減らした理由

投資をしている人の中でも、ここ1年で投資金額を増やした人もいれば、減らした人もいます。それぞれの理由を聞いた結果が図表6です。

図表6 投資を増やした理由vs減らした理由

2023年は日本株高や円安、インフレが進みました。特に目についたのはインフレの影響です。投資を増やした人の理由で最も多かったのは「インフレが進み、預貯金だけでは資産が目減りしてしまう」です。特に高齢層の選択率が高かったです。彼らは過去にインフレを体感したことのある世代であり、その経験値が働いているのでしょう。

一方、投資を減らした人の理由で最も多かったのは「支出が増えて投資に回せるお金が減った」です。特に家計を支える中堅層の回答が多かったです。支出増はインフレがきっかけであることが推測できます。同じ要因でも置かれた状況によって、行動が真逆になるのは興味深いところですね。

同じことが「株式相場や為替の変動が激しかった」にもあてはまります。これを好機ととらえた人は投資額を増やし、怖くなった人は投資額を減らしています。

また、若い世代は収入の増減が投資額の増減と強い関係がありました。2024年度も賃上げが続く公算が高いです。1万人アンケートの結果に基づく限り、若年層の投資はさらに盛んになると予想されます。

皆さんは投資をするにあたって、どのようなことを考えていますか。働く1万人と同じところ、違うところがそれぞれあったと思います。これらのデータを横目で見ながら、2024年の投資計画を策定していかれるといいでしょう。

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