リバースメンタリングとは?効果やメリット、導入する際のポイント3つを徹底解説

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社内の人間関係が硬直してしまっている。ベテラン社員が新しい考えを取り入れられていない。コミュニケーションが不足している気がする。

このような悩みや懸念に共感するマネージャーや人事の方々は少なくないはずです。そこで効果を発揮するかもしれない手法として「リバースメンタリング」をご存じでしょうか? リバースメンタリングとは何か、なぜ社内コミュニケーションの課題に効果を発揮するのか、導入する場合の注意点など、早速押さえていきましょう!

リバースメンタリングとは?若手社員が先輩社員のメンターとなって指導を行う逆メンター制度

リバースメンタリング(RM)とは、若手社員が上司や先輩社員のメンターとなって指導や助言を行う制度であり、「逆メンター制度」とも呼ばれます。1990年代後半に米国のGE社などで導入されはじめ、P&Gジャパンや住友化学、資生堂など国内でも実施する企業が増加しています。

そのメリットとして挙げられるのが以下のような効果です。

・ベテラン社員が最新技術や若年層の考え方、カルチャーなどを学び、視野を広げられる
・若手社員の指導力や教える事柄への理解が高まる
・社内のコミュニケーションが活発になり、組織の風通しがよくなる
・若手社員のエンゲージメントや心理的安全性の向上につながり、離職防止につながる
・ベテラン社員がメンターとなる際の気付きが得られる
・企業がダイバーシティ&インクルージョンなど新しい潮流に合わせて社内の文化や考え方を更新しやすくなる

2018年に、5,000人以上の規模の会社に勤務する20歳以上の男女6,145人が回答したアンケートでは、「リバースメンタリングの経験がある」人の割合は7.4%とまだまだ限定的ながらも、若手グループより、仕事のしやすさや相談しやすさに関するメリットが比較的多く挙げられたということです(※)。

※参考:Reverse? 真の成長機会とは何か リバースメンタリングでシニアと若手の相互の成長を目指す┃特集 若手を辞めさせるな(リクルート『Works 170号』)

単にベテラン社員の学びとなるだけでなく、社内の教える・教えられるの関係を逆転させることで、人間関係にポジティブな影響が生まれるのがリバースメンタリングのポイントといえるでしょう。

リバースメンタリングを導入する際の3つのポイントとは

リバースメンタリングを導入するうえで意識すべき3ポイントをご紹介します。

ポイント1.メンター・メンティー間の新たな関係性を作り出す

リバースメンタリングの効果で重要なのが、社内に新たな人間関係をもたらしてくれる点だとは、すでにご説明しました。しかし、直属の上司、部下など普段の教える・教えられる関係を反対にするだけでは広がりは限定されてしまいます。また、普段指導されている直属の上司や先輩に指導するのは気後れしてしまい上手くできないという若手社員も少なくないでしょう。

そこで、リバースメンタリングにおいてはメンター・メンティーのセッティングを他部署など水平的な関係性を取り入れながら行うことが推奨されます

ポイント2.メンターのフォローアップを欠かさない

いくら会社の制度だとはいっても、自分よりも経験豊富で年齢も上の人物に指導をするというのはメンターにとって大きなストレスとなりかねません。そのため、声掛けなどメンバーのフォローアップを定期的に行い、メンティーには傾聴で守ってほしいルールやメンターの心理的安全性を確保するためのポイントなどを事前に伝えておくことが求められます。

また、メンターのモチベーションを高めるため、指導の取り組みを評価へ反映する企業も存在します。

ポイント3.オリエンテーションで目的や意図を共有する

リバースメンタリングに限らず、新しい取り組みを導入するにあたって、参加者に目的や意図を共有することが不可欠です。社内にどのような変革をもたらし、どんな組織像を実現することを理想として描いているのか、メンター・メンティーそれぞれに何を期待しているのかなどを説明するオリエンテーションの機会を設けましょう。

また、それらの目的・意図を設定する過程で、どのような頻度やルールでリバースメンタリングを実施すべきかが、明らかになってくるはずです。共有して以降はメンター・メンティーからの意見も取り入れながら、リバースメンタリングの効果を計測し、ブラッシュアップをつづけていきましょう。

データで見る社内コミュニケーションの課題とリバースメンタリングの効果とは

リバースメンタリングは、日本の企業が抱えるコミュニケーション上の課題を解決する可能性が大いにあると考えられます。

HR総研が2023年3月に公開した『社内コミュニケーションに関するアンケート』によると、「社内コミュニケーションに課題はあるか」という質問に対し「大いにあると思う」が23%、「ややあると思う」が46%と、合計すれば全体の約7割が社内コミュニケーションに課題を感じています

そして、そのなかでも企業規模を問わず「コミュニケーションに最も課題があると思われる関係間」として指摘されたのが、以下の3つです。

・部署内の課長とメンバー
・部門間
・経営層と社員

【コミュニケーションに最も課題があると思われる関係間】

引用元:HR総研:社内コミュニケーションに関するアンケート 結果報告 社内コミュニケーション状況に改善の兆しか、改善・悪化の要因とは?┃HR Pro

リバースメンタリングであえて関係を逆転させ、さらに部門の垣根を超えた知見の共有を実現することは課長とメンバー、部門間、経営層と社員など隔たりが生まれがちな関係性に、垂直・水平の両方向で効果をもたらす可能性があります。

その結果として、同調査にて「最も課題がある関係間でのコミュニケーション不全による業務の障害」「最も優先して解決したい業務の障害」の両方でトップに挙げられている「目指す方向性への認識の統一」も大いに前に進むでしょう。

終わりに

日本企業が抱えるコミュニケーションの課題にクリティカルに効果を発揮する可能性がありながら、まだまだ導入が進んでいない「リバースメンタリング」についてご紹介してまいりました。コロナ禍でリモートワークやテレワークを余儀なくされたことで、改めて社内コミュニケーションの重要性を痛感したという方は多いはずです。その解決につながる新たな一手として、リバースメンタリングの導入をぜひご検討ください!

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