<ライブレポート>Sexy Zone、現グループ名義最後のライブで「完璧で究極」を体現

Sexy Zoneが自身初の3大ドームツアー【SEXY ZONE LIVE TOUR 2023 Chapter II in DOME】の最終公演を12月25日に東京ドームで開催した。

12月25日の東京ドーム。【SEXY ZONE LIVE TOUR 2023 Chapter II in DOME】が終了し、ドーム内には、規制退場を告げるアナウンスが響いていた。本来なら、アナウンスに従って帰り支度を始めるファンが、この日ばかりは声をかぎりに「Sexy Zone」と叫び続けている。12年前に結成されたグループの名前を冠した最後のツアー。来年以降のライブでは、もうこの名前を叫ぶことはできない。クリスマスという特別な日に、Sexy Zoneのファンである「セクシーラバーズ」(以下セクラバ)は、全身全霊で、愛する人たちのグループ名を叫び続けた。

その3時間前にスタートしたライブ本編は、アイドルのコンサートとしては「完璧で究極」と断言してもおかしくないほど、出色の出来だった。冒頭の映像から4人の個性が爆発。誰かに追われている4人のメンバーが、佐藤勝利、松島聡、菊池風磨、中島健人の順で、敵を交わしながら朝焼けの時間に集合する。オレンジ色の朝焼けの中に佇む4人。そこからセンターステージの上に迫り上がったキューブの穴から4人が登場、最新シングル「人生遊戯」で、〈大胆かつ繊細にいざ参らん♪〉という歌詞をそのまま体現し、開幕の狼煙をあげた。

そこからシングル曲やタイアップ曲、アルバムの人気曲などが冒頭から怒涛のように続くのだが、驚くべきは4人の運動量。1曲のうちに、センターステージからクレーンに移動したかと思いきや、後方のステージで踊り、そのあと外周を走り、5曲目の「BUMP」でようやくメインステージにたどり着く。その間中、歌唱は音源を超える艶やかさを保ち、ダンスもキレキレ、ど迫力のラップに、きめ細やかなファンサと、至る所でサプライズとハプニングの奇跡が起こっていて、目がいくつあっても足りないほどだ。

6曲目の「RIGHT NEXT TO YOU」では、メインステージでしっかり4人のダンス力をアピールし、カッコ良さを極めた後で、今度はコント的な映像を挟み、黒服姿になって、女装のダンサーと「君にHITOMEBORE」でペアダンスなどを披露する。それだけでも十分かっこよさと面白さのハイブリッドの極みなのに、続く「スキすぎて」では、オリジナルのシャンパンコールで、55,000人を煌びやかな饗宴の世界へと誘う。一歩間違えば享楽主義の下品な世界観に傾いてしまうところを、彼らがやるとそこに独特の気品が漂うから不思議だ。

菊池風磨のソロ「My World」では、〈I am the king and This is my world〉という歌詞とともに、菊池の持つ覇王感が東京ドーム全体を支配した。歌い終わると、真っ黒になったメインステージに浮かび上がる、玉座に座った中島と軽く乾杯し、中島のソロ「ROSSO」が始まった。中島の中にある情熱や血液、口に含んだワインや、唇に塗られたルージュなどが、官能のオーラとなって東京ドームを覆い尽くす。そこから、シティポップや1980年代のニューウェーブ、アイドルらしいポップソングなどが続き、彼らの体現する音楽の多様性と普遍性に酔いしれた。

最新アルバム『Chapter II』に収録されたミドルチューンのラブソング「せめて夢の中でだけは君を抱きしめて眠りたい」は、AI採点のカラオケチャレンジで披露するという演出も秀逸だ。ともすればファンサービスのためのお手振りソングになってもおかしくないところを、「カラオケで100点を出す!」という目標のもと、メンバーが一致団結して歌うことで、彼らの歌のうまさも再認識できた。適度な緊張感に楽しさ、ラブソングらしい甘さが重なったトリプルコンボな展開だ。

MCでは、クリスマスということで、クリスマスのコスプレアイテムをそれぞれ選びつつ、その日見学に来ていたWEST.の重岡大毅、Snow Manの宮舘涼太、なにわ男子の藤原丈一郎を紹介。中島と菊池が、最初にHey! Say! JUMPの「Star Time」の振り付けを教わったというレアなエピソードも飛び出した。

後半戦は、「Cream」のコーラス部分を、セクラバに歌わせるための練習から始まり、会場が甘く溶けていくような一体感に包まれる。佐藤勝利のソロ「雨に唄えば」では、たくさんの動物の着ぐるみが登場。ライオンの着ぐるみを脱ぎ捨て、チェックのスーツを着た勝利が歌うソロ曲は、自身の作詞。〈いつかはヒーローになれるはず〉と歌う彼の、永遠の少年性も、このグループの美の確かな一角を担う。そうして、Sexy Zoneの最終兵器・松島聡のソロ「Turbulence」へ。日本語にすると「乱気流」というタイトルだが、普段は太陽のような松島が、自分の中にある光と影を、自分の肉体とライティングで表出させていくような目眩く展開。4人のソロ曲の中では、いちばん「激しさ」や「乱調」を感じさせる。彼はこの秋、【コ。展】と題して、白と黒の世界観で数々のマネキンアートを発表していたが、その集大成のようなパフォーマンスだった。

ここまででもう、カッコ良さに可愛さも、明るさと翳り、王道と乱調、正しさと危うさ、ひたむきさと妖しさなど、アイドルが持つあらゆる要素を、音楽の中に昇華させていた4人だが、ゴールドラメの衣装に着替えてからは、さらに彼らの自らのオーラを外に解き放つ。ジャンクションで、中島が華麗なジャズピアノを披露し、それぞれにソロのダンスで見せ場を作ると、椎名林檎が楽曲提供した「本音と建前」を、メインステージでケレン味たっぷりに歌い踊る。〈三二一…sexy〉という、世界中で彼らにしか似合わないセリフの後に、〈全俺が愛だぜ/共犯関係でしょう〉と歌う中島によって、ドームに渦巻く官能の意味が、分かったような気がした。Sexy Zoneの持つ「セクシーさ」というのは、結局は、その言語感覚にある。10代の頃から何度も「セクシーの意味」を聞かれ、たどり着いた答えが、「愛し愛されること」「照れることなく愛と感謝を語ること」だったのではないだろうか。

あまりの美しさと妖しさに、ドームがため息で埋め尽くされていると、4人は真っ直ぐに前を見つめて、後方ステージに向かって花道を歩み始めた。歌うわけでも、踊るわけでもない。ただ歩くだけなのに、55,000人が4人の姿に釘付けになった。これぞスターのオーラそのもの。この「花道をただ歩く」だけの5人の堂々とした姿が、目に焼きついて離れない。これぞアイドル。オーラさえあれば、歩くだけでも絵になるのだ。

後方ステージでの「Purple Rain」では、ダンサーと一緒になって、一糸乱れぬシンクロダンスを披露。そして、「Forever Gold」からの、懐かしのアイドルメドレーへ。昔のSexy Zoneを知っている人も知らない人も、「アイドルって最高」と思える、無条件の破壊力。楽しさ、優しさ、美しさ、強さ、明るさ。未来を照らすそんなプラスの要素のみならず、ちょっとおバカな無邪気さもある。それがSexy Zoneなのだ。メドレーの後、デビュー当時の映像とともにデビュー曲「Sexy Zone」が披露され、センターのガラスが割れた効果音と共に佐藤が「セクシーローズ」と呟いた声に、大きな歓声があがった。

挨拶を挟んで、ライブ本編は、ちょうど1年前、マリウス葉と5人で立った東京ドームのステージのために、5人で制作した楽曲「timeless」で締めくくられた。オープニングの映像と同じく、たくさんのペンライトによって、オレンジ色に染まる会場。最後のラップとセリフのパートでは、大きなスクリーンにマリウスの姿が映し出された。この日、会場に集まった55,000人と、マリウスも加えたSexy Zone 5人の愛が、timelessであることを確認できたような、そんな時間。

アンコールの「Sexy Summerに雪が降る」では、再びのクリスマスコスで、フロート車に乗って登場。アンコールのラストの「RUN」では、長い東京ドームの花道をメインステージから後方ステージまで、軽やかに走り抜いた。「試練は、それを乗り越えられる人にしか与えられない」とは孔子の言葉だが、幾つもの試練を経て、Sexy Zoneはいつの間にか、「誰もがセンターを張れるグループ」に成長していた。衣装にも、照明でも、ポイントポイントで、「正方形」が使われていたが、この4人のパワーバランスは今、ステージ上で完璧な正方形を描いていた。「アイドルが天職」と断言できる4人にとっては、その試練さえ、成長のための踏み台でしかない。アイドルで、ヒーローで、欲しいものを届けてくれるサンタクロースでもある全部入りな4人は、55,000人を誰一人置いて行かない、参加した人を絶対に幸せにする究極のステージを作り上げた。今のSexy Zoneが、アイドルとしての「完璧」と「究極」に、最も近い場所にいることは、もう疑いようがない。

Text by 菊地陽子

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