連載[新潟2023年・記者は見た!]<1>「コメ等級低下」 異常高温で大打撃、農家の悲鳴を何度聞いたか…"王国"維持へ対策急げ

魚沼産コシヒカリの稲刈り=9月、南魚沼市茗荷沢

 2023年も年の瀬を迎えた。新潟県内では今年もさまざまな出来事があった。現場を駆け回った記者が、ニュースを振り返る。(6回続きの1回目)

 「3等米を出したのは初めてだ」。今年の秋は収穫の喜びではなく、落胆する農家の声を何度も聞いた。

 今夏の記録的な高温や渇水により、新潟県の2023年産米は粒が白く濁る白未熟粒などの高温障害が多く発生した。コシヒカリは例年、1等米比率が80%前後だが2023年は10月末現在で4.9%。うるち米全体でも15.7%で、これまで過去最低だった10年の20.3%(コシヒカリ、うるち全体とも)を大幅に下回る見通しだ。

 コメは等級が下がると精米歩留まりが悪くなり、取引価格が安くなる。新潟県は作況指数(平年=100)も「やや不良」の95で、鳥取県と並び全国最低だった。質と量の低下で稲作農家の経営悪化が懸念される。

 梅雨明けしたとみられる7月21日以降、新潟県内では高温と極端な少雨が続いた。8月には台風などに伴うフェーン現象が3回も発生し、8月初めに出穂するコシヒカリは特に影響を受けた。

 国内最高級とされる魚沼コシヒカリも等級低下が目立ち、産地のJAは試食会などを通じて「変わらぬおいしさ」をアピールした。

 一方、新潟県のブランド米「新之助」は1等が95.3%と例年並みだった。晩生(おくて)品種で高温に強く、残暑が続く中でも順調に生育した。

 ただ、新之助は品質維持のため、流通できるのは1等米のみ。生産者には研究会への所属や指針に基づいた栽培などが求められており、「条件が厳しい」という意見も根強い。手堅い需要があり、作り慣れたコシを安定的に生産したいと望む農家は少なくない。

 新潟県は中長期的な取り組みとして、高温耐性を持つ「コシヒカリBL」の開発を急ぎ、高温下でも食味などが低下しない肥料のやり方を検証する方針だ。専門家からは、今後も高温傾向の天候が続く可能性が指摘されている。「コメ王国」のブランドを保持するため、早急な体制づくりが求められる。

(報道部・萩野玲子)

▼「あの時」を振り返る

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