「弘法の筆」AIで再現、香川大 書道文化に光

香川大創造工学部の岡崎慎一郎准教授。手に持つのは弘法大師空海の筆遣いを人工知能で再現した文字=27日、高松市

 平安時代の能書家で、「三筆」と称される弘法大師空海の筆遣いを人工知能(AI)で再現することに香川大が成功した。デジタル機器が普及し、日常生活で書道文化に触れる機会は減少の一途。創造工学部の岡崎慎一郎准教授(44)は「AIの面白さを介して、書道の素晴らしさが再認識されればいい」と期待する。

 現存する史料をAIに学習させ、空海の時代にはない片仮名も含め「空海らしさ」を実現した。二つのAIを競わせる「GAN(敵対的生成ネットワーク)」という手法を採用。一方が空海の書跡に近い文字を生成し、もう一方が精度の判定を繰り返すことで、次第に空海の筆致に近づいていく。最後は手作業で微調整した。

 岡崎さんは香川大広報室からAIによる空海の書跡の再現を依頼され研究を開始。8月、再現した「人×テクノロジー 次の進化への挑戦」という文字が広報誌の表紙に掲載された。

 書道を研究する同僚の監修で完成度にお墨付きを得たが、形が似ているだけにとどまらない「人間らしさ」の表現が課題だという。

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