「僕、帰れたよ」迷子猫が奇跡の生還 どうぶつのきもち多田さん保護し飼い主に 

2カ月ぶりに帰宅、Aさんの手に包まれ安堵の表情を浮かべる「そうた」君(多田さん提供)

金沢市在住の飼い猫「そうた」君(雄2歳、キジトラ種)が10月14日以降、飼い主のAさん(女性、70)と出かけた佐渡旅行の帰路、行方不明になった。12月18日、猫の保護活動等に取り組む糸魚川市青海のNPO法人「どうぶつのきもち」理事長・多田松樹さん(49)が、道の駅親不知ピアパークから少し離れた外波集落で保護。「そうた」君は2カ月ぶりに帰宅し、Aさんと再会を果たした。

「そうた」君は、Aさんにとって共に暮らすかけがえのない家族。車の後部に専用ゲージを装備し、長期に出かける時は連れ出していた。

佐渡からの帰路は新潟市内で給油し、一般道を金沢方面へ。親不知ピアパークでトイレ休憩と仮眠を取った。自宅へ到着したのは15日早朝。車内に「そうた」君の姿はなかった。

Aさんは、すぐに引き返し、下車した覚えのある場所を捜索、沿道の要所要所を尋ね歩き相談、発見への協力を呼びかけた。活動は6日間に及び、体力は限界に達した。

後悔、心労をAさんと共有、活動を引き継いだのは、さいたま市在住の長女・Bさん(46)。行方不明になったと聞いたのは2週間後だった。母の入院中に「そうた」君を預かり、一家でかわいがったBさん。「そうたは私が捜すしかない。諦めたくない」と、新潟市内、親不知に狙いを定め、SNS等で情報チラシを発信した。

「そうたが、今この時も苦しんでいると思うと必死でした」とBさん。検索で引っかかった多田さんのブログに投稿し、協力を呼びかけた。多田さんはすぐに反応して拡散、目撃情報を募った。

降雪が間近に迫った12月18日早朝、スタッフが地域猫の餌やり中、目印の耳カットがない、見かけない種類の猫を発見。連絡を受けた多田さんは現地に向かい、「間違いない」と確信、すぐ保護した。上越市内の動物病院で診察したところ、細菌等の感染、外傷はないが、栄養失調の状態だった。

同日夜、多田さんは金沢まで届けた。自宅が近くなると分かるのか、鳴きだしたという。Aさんの手に包まれると安堵(あんど)の表情を浮かべ、多田さんに目線を向け「僕、帰れたよ」と伝えた。

無言の涙で「そうた」君を迎えたAさん。「苦しかった。心が折れそうだった」と2カ月間を振り返り、「本当に感謝です。多田さんのNPO、猫たちが食べられるように、応援していきたい」と話した。逃がしたことは反省し「二度と離れないようにします」と誓った。

無事生還にBさんは、誹謗(ひぼう)中傷せず励まし、助言をくれたSNSの多くのつながりに感謝。とりわけ多田さんには「(降雪前の)ぎりぎりでそうたを見つけていただき、感謝しかありません」と涙ぐんだ。

「2カ月を超える期間、事故、病気、けがをすることなく過ごしていたのは奇跡」と多田さん。「何より飼い主さんが、諦めずに探したのが発見につながった」とたたえ、教訓としてマイクロチップ着用などを挙げた。

Aさんの娘・Bさんが作成したSNSの発信チラシ。多田さんも拡散し、情報提供を呼びかけた

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