「高岡発ニッポン再興」その123 NY市の「敵」はネズミ…高岡市は

出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・ニューヨークのエリック・アダムズ市長はネズミ駆除に力を入れ、「美しいニューヨーク」を目指している。

・NYではネズミ駆除専門官の設置やゴミ対策を徹底した。

・高岡市はNYに倣ってカラス退治に力を入れるつもりだ。

市議会議員になって初の議会は、2年前の12月定例会でした。そこで私はカラス退治を訴えました。38年ぶりに帰郷。中心部に無数のカラスが飛び回り、道路が糞で汚れている現状に我慢できなかったのです。それ以降も、私は頻繁にカラス問題を追及しており、「カラス議員」と呼ばれています。

「高岡の敵はカラス」。そう思って議員活動をしていますが、同じような思いをしている政治家がニューヨークにいます。エリック・アダムズ市長です。去年11月にこんな広告を出して話題となりました。「ニューヨークの本当の敵と戦う血気盛んな人を募集する」というものです。ニューヨークの敵といえば、マフィアかなと思うのですが、そうではありません。ネズミだったのです。

初代のネズミ駆除の専門官を募集したのです。「ラット・ツァー(ネズミ皇帝)」という異名のある役職です。

年俸は15万5000ドル。日本円でおよそ2000万円と破格です。アダムズ市長は声明で「ネズミ以上に嫌いなものはない。ニューヨーク市内の数多くのネズミと戦うために必要なやる気、意志の強さ、そして駆除の本気度を持ち合わせているなら、夢の仕事があなたを待っている」と述べました。

そして、今年4月に採用されたのは、元小学校教諭の女性です。900人の応募の中から選ばれました。地元の新聞によりますと、この女性は過去に学校でネズミを減らした実績があるといいます。アダムズ市長は、ニューヨーク市にとってナンバー1の敵は、ネズミだと強調。「これまでも多くの取り組みをやってきたが、ネズミ駆除専門の人が必要なのは明らかだ」と述べ、起用した理由を語りました。

ニューヨーク市内ではどれぐらいネズミがいるのか。正確な数字はわかりませんが、800万匹いるとの試算もあります。市への苦情も2万件を超えています。

ネズミ対策の大事なポイントはゴミです。ニューヨーク市は今年4月から、ゴミ出しの時間を繰り下げました。午後4時以降を、8時以降に変えたのです。ニューヨーク市では、夕方にゴミを道路の脇に出し、夜中回収する仕組みです。ゴミを外に出しておく時間を短くし、ネズミがゴミの中の餌をあさる時間を少なくするのが狙いです。

また、来年3月からは、市内のすべての事業者に対し、ふたが付いた容器にゴミを入れることを義務付けます。違反した業者は1回目50ドル、2回目100ドル、3回目200ドルと、徐々に額が増えます。ネズミが入れないようにします。

アダムズ市長はネズミ嫌いで知られており、ネズミ駆除が重要政策なのです。「美しいニューヨーク」を目指しているのです。

このネズミ対策の専門官起用のニュースを見ながら、やはり、自治体の仕事とは、身近な課題を解決することなのだと、痛感しました。来年も「カラス議員」として、解決に向け努力します。

トップ写真:マンハッタンのコロンバスサークル59番街駅ホームを闊歩するネズミ(2023年5月8日米国・ニューヨーク市)出典:Gary Hershorn/Getty Images

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