綾野剛で実写映画化『カラオケ行こ!』原作者〈和山やま〉作品の魅力を紐解く!キーワードは「安心感」「画風」「可笑しさ」

「カラオケ行こ!」原作 ©和山やま/KADOKAWA

あの人気マンガ、まさかの実写化

和山やまの人気マンガを映画化した『カラオケ行こ!』が2024年1月12日(金)より全国公開となる。

同名の原作マンガは、合唱部部長の中学3年生が突然ヤクザにカラオケに誘われ歌の指導を頼まれるという奇抜な設定と予想に反するエモい展開、そして思わずクスッと笑ってしまうユーモアで、マンガ大賞2021第3位をはじめマンガ賞に続々ランクイン。1巻完結作品ながらも累計60万部を突破し、続々と重版されている超人気コミックだ。

綾野剛が熱唱! 映画『カラオケ行こ!』

合唱部部長の岡聡実(齋藤潤)はヤクザの成田狂児(綾野剛)に突然カラオケに誘われ、歌のレッスンを頼まれる。組のカラオケ大会で最下位になった者に待ち受ける“恐怖”を回避するため、何が何でも上達しなければならないというのだ。狂児の勝負曲はX JAPANの「紅」。聡実は、狂児に嫌々ながらも歌唱指導を行うことに。そんな二人がカラオケを通じて少しずつ打ち解けてきた頃、“ある事件”が起きてしまう。果たして二人の運命は――

そんな本作の原作マンガを手掛けたのは和山やま。2019年に発売された「夢中さ、きみに。」で第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞と第24回手塚治虫文化賞短編賞を受賞、以降「カラオケ行こ!」「ファミレス行こ。」「女の園の星」と次々にヒット作を輩出してきた。2024年に「カラオケ行こ!」が映画化されることでその評価が決定的となった和山だが、彼女の作品の魅力はどこにあるのか? 多くの人に愛される所以と作品から醸し出される「安心感」を、「画風」「可笑しさ」というワードから紐解いてみよう。

名だたる漫画家からの影響

和山やまの画風から感じることのできる、見やすいだけではなくどこかホッとする柔らかさと朗らかさ、微笑ましさは、古屋兎丸・伊藤潤二・小林まこと・松本大洋といった名だたる漫画家たちから受けた影響が大きいという。ジャンルこそバラバラだが、確かな画力と創造性あふれる作品で知られる大御所漫画家たち。その面々の作風に共通するそこはかとない懐かしさが、和山の描く画風の「安心感」に現れているのだろう。

そして彼女が描く作品は、どれも思わず笑みを浮かべたくなる“笑い”も特長のひとつだ。安心感のある笑いを生み出すのは、登場人物たちを俯瞰して観察することでうまれる“面白い日常会話”であることが多い。「うしろの二階堂」「夢中さ、きみに。」にも、その要素が色濃く現れている。

柔らかな画風とキャラクター設定の可笑しみ

そして、「カラオケ行こ!」では、“ヤクザが中学生をカラオケ屋に連れていく”という緊張感のある設定を、「カラオケ大会で負けると下手なイレズミを彫られる」「中学生の聡実の方が毒舌」「面倒見がよく、ちょっと不思議で妙にキュートなヤクザ・成田狂児」といったキャラクター設定を盛り込むことで、違和感が織りなす「可笑しさ」と「安心感」を同時に与えてくれる。

シャープかつ柔らかな画風と豊かな人物キャラクター設定、随所にちりばめられた可笑しさが生み出す安心感と親近感こそ、和山がここまで愛される所以なのかもしれない。とくに「カラオケ行こ!」はデジタルで描かれているため線が太く、全体的にまったりとした空気感とは裏腹な迫力も大きな魅力だ。

そして和山が生み出した「安心感」「親近感」「可笑しさ」を120%に映像に引き出したのが、監督の山下敦弘であり、脚本の野木亜紀子だ。この二人が和山原作の魅力を十分に引き出してみせた映画『カラオケ行こ!』は、マンガ好きも映画好きも満足させる仕上がりとなっている。

『カラオケ行こ!』は2024年1月12日(金)より全国公開

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