今は日米で転換期!金利が下がると株価は上がる?押さえておきたい両者の関係

2023年末現在、アメリカでは来年の利下げが見込まれる一方で、日本ではマイナス金利制作解除が検討されています。金利が転換点を迎えることが見込まれるなかでアメリカでは株価が上昇し、ダウ平均が過去最高値圏となっています。

株式市場では金利の動きが重要です。今回は金利の動きと株価の関係についてご説明いたします。


金利が上昇すれば株価は下落する傾向に

まず金利が経済や投資にどのように影響を与えるかを理解する必要があります。金利は、お金を借りる際のコストを表します。したがって、金利の動きは、個人消費、企業投資、株式市場など、経済全体に影響を及ぼします。

金利が上昇すると株価が下落する場合があります。その要因はいくつかあります。

◆借入コストの増加
金利が上昇すると、企業の借入コストが増加します。これにより、企業の利益が減少し、その結果、株価が下落することがあります。特にハイテク株や新興市場などが影響を受けやすいです。それはハイテク株や新興市場などの銘柄は成長するために設備投資などにお金をかける傾向にあるからです。

◆消費者支出の減少
金利が高いとローンやクレジットの利息負担が重くなり、消費者の支出が減少します。消費の減少は、企業の収益に悪影響を及ぼし、株価を下げる要因となります。

◆投資の魅力の低下
金利が上がると、債券などの固定収益投資が魅力的になります。投資家が株式から債券に資金を移動させると、株価は下がります。

◆経済成長の鈍化
高金利は、企業の投資意欲を減退させ、経済成長の鈍化を招きます。これも株価にネガティブな影響を与える要因です。

金利低下時の株価上昇の要因

反対に、金利が低下すれば株価は上昇傾向となります。その要因は次のとおりです。

◆借入コストの減少
金利が低下すると、企業の借入コストが減少し、利益が増えることがあります。これにより株価が上昇することがあります。

◆消費者支出の増加
低金利は、ローンやクレジットの利息負担を軽減し、消費者の支出を刺激します。これが企業の収益を増加させ、株価を押し上げることがあります。

◆投資へのインセンティブ
金利が低いとき、債券のような固定収益投資の魅力が低下します。その結果、より高いリターンを求めて株式市場への投資が活発になり、株価が上昇します。

◆経済成長の促進
低金利は企業投資を促し、経済成長を加速させることがあります。これも株価上昇の一因です。

金融危機時には中央銀行は金利を下げる

ここからは過去の例を挙げてご説明していきます。

2008年9月のサブプライムローンが金融危機を招いたリーマン・ショック後は、米国のみならず先進国を中心として多くの国で中央銀行が金利を大幅に引き下げ、大量の資金供給政策を講じました。金融危機後、多くの国で中央銀行が金利を大幅に引き下げました。この低金利環境は株式市場の回復を支援しました。

また2020年のCOVID-19パンデミックの際は、歴史上初めて各国の経済活動がほぼ停止状態になりました。その際にも各国の中央銀行は金利を引き下げたり量的緩和を実施しました。「異次元の金融緩和」と言われる政策などを受けて株価も急回復しました。

ただアメリカ市場では2022年に利上げ(金利を上げる政策)をしたことによって下落に転じました。

利上げにはインフレが関係

アメリカ市場で2022年に利上げに転じた背景には物価の上昇(インフレ)があります。金利はインフレに対する中央銀行の対応にも密接に関連しています。インフレが進むと、中央銀行は金利を引き上げることが多く、これが株価に影響を与えます。特にアメリカの中央銀行であるFRBは、米国の雇用の最大化、物価の安定化をミッションとしているため、インフレになると金融政策(利上げ)を行い、消費を抑え、物価の安定化を図るのです。

投資家の心理状況にも影響

実際の金利変動だけでなく、市場の期待も重要です。市場参加者が将来の金利上昇や低下を予想すると、その予想に基づいて株価が動くことがあります。2023年末の株高はまさにこれから金利が下がる期待感から上がったわけですね。また金利の上昇局面では投資家の警戒心が高まることで投資家の物色の矛先がグロース株よりバリュー株に向く傾向があります。

金利変動が株価に与える影響は、経済状況やその時点での市場のセンチメント(心理状況)によって異なります。たとえば、経済が好調な時に金利が上昇しても、株価にはそれほど悪影響を与えないことがあります。

金利の変動は株式市場に大きな影響を及ぼす要因の一つです。金利が上昇すると、通常は株価が下落する傾向がありますが、この関係は複数の要因によって変わることがあります。投資家としては、金利の動きだけでなく、経済全体の状況、市場の期待、および政策決定者の行動を注視することが重要です。

債権と金利の関係

金利には期間によって長期金利と短期金利があります。前述したように金利動向によってマーケットは大きく動くため、投資を行う際に金利はとても重要です。長期金利とは期間が1年以上ある債券の金利のことを示しますが、経済ニュースなどで報じられる長期金利は「10年物国債の利回り」を示すことが一般的です。

期間が1年未満の債券の金利は「短期金利」と呼ばれます。利回りは、債券を発行したときの宣言された利率(表面利率)とは異なり、常に変動します。これは、債券価格が満期に達するまで、常に変動するためです。つまり、債券は満期になると特定の価格で償還されますが、それまでは価格が変動し続けます。

債券には金利が上昇すると債券価格が下がり、金利が低下すると債券価格が上がるという特徴があります。そのため利下げ局面では債券を買うことが投資の行動として合理的だと言えます。

ではなぜ金利が上昇すると債券価格が下がり、金利が低下すると債券価格が上がるのでしょうか。

例えば、保有している債券の金利が1%だとして、現在の金利が2%だとしましょう。この場合、保有している債券よりもこれから発行される債券の方が金利は高いため、保有している債券を売却するためには債券価格を下げる必要があります。また、保有している債券の金利が1%だとして、現在の金利が0.1%だとしましょう。このケースでは、保有している債券よりもこれから発行される債券の方が金利は低いため、保有している債券は高く売却できるので債券価格は上昇するのです。

債券は、満期まで保有すればあらかじめ決められた価格で戻ってきます。ただし、途中で売却する場合は、絶えず債券価格が変動しているので注意が必要です。債券価格を決める主な要因は金利になりますので、金利情勢についてはしっかり確認しておきましょう。また市場金利に完全には連動しないのは、需給関係や信用リスクの変化の影響もあるためです。投資を検討される方は押さえておいてください。

日米の今後の金利は?

最後に、2023年末時点の日米の状況を紹介しておきましょう。

12月18日の週は週足で主要3指数は上昇。ダウ平均は8週連続で上昇しており、週足で4年10カ月ぶりの連騰記録をつけました。米市場が過去最高値を超えて上昇していくその背景にはFRB(米連邦準備理事会)がハト派転換したこと、長期金利の下落があります。

12月13日の米FOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を5.25〜5.5%と3会合連続で据え置いたほか、今回の利上げサイクル終了の可能性が示され、2024年に利下げに転じるとの予想が強まりました。2024年末の政策金利が参加者の中央値で4.6%と現在の金利水準から0.25%換算で3回利下げする状態となり、9月に公表した前回の見通しでの利下げの2回分から利下げの回数の予想も増えています。

日本では12月19日に日銀金融政策決定会合がありましたが、日銀が現行の大規模金融緩和政策を継続することや、植田総裁も利上げに慎重な姿勢だったことで、株式市場では買い戻す動きが優勢となりました。


いかがでしたか?

ぜひ金利と株価の関係を把握して皆様の投資に活かしてくださいね。

私事となりますが今年も毎週休まず連載できて嬉しかったですし、読んでくださる皆様に心から感謝です。本当にありがとうございました!

良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。

© 株式会社マネーフォワード