【ルポ】佐世保市立急病診療所 寒さの中駐車場で続く診察 今後の在り方を模索

駐車場の1階に並べられた資器材=佐世保市

 医師らの人手不足や感染対策といった課題を抱えながら、平日夜間と休日に稼働する佐世保市立急病診療所(佐世保市高砂町)。佐世保市中央保健福祉センター内にあり、新型コロナ禍以降は感染防止のため、同センターに隣接する市営高砂駐車場での対応が続いている。現状を取材した。
 12月21日夜。午後8時からの診察に合わせ、午後7時半になると看護師らスタッフが準備に取りかかった。受診の基本的な流れはこうだ。受診者用の駐車スペースを設け、来所者には駐車場の発券機近くで問診票や体温計を渡す。車内で問診票の記入や体温測定をし、その後は車内で待機。外科は診療所内だが内科と小児科の診察は車内または近くに設置したコンテナ内。会計や薬の処方などは車の窓越しで行う。
 長崎県内各地で断続的に雪が降った同日。時折、体を動かして寒さをしのぎながら患者を待つ看護師らスタッフ。車が入ってくると患者か駐車場の一般利用者かを確認していた。取材した2時間ほどの間に数組の患者が来所し、スタッフは駐車場と診療所などを行き来していた。
 では、徒歩で来所した患者はどこで待機するのか。駐車場内を見渡すと所定の場所で幼子を抱え、毛布をかけて待つ女性の姿がみられた。仕切りと暖房器具は設けられていたが、テントやコンテナのような「部屋」ではない。コロナ禍後はこうした状況が続いている。
 急病診療所は医師の派遣を市医師会へ委託し、軽症の急病患者に対応。月-土曜の午後8時~同11時に内科と小児科、日祝日の午前10時~午後6時に内科、小児科、外科の診療をしている。
 コロナ禍前はインフルエンザの流行などにより、年間患者数が約1万5千人と飽和状態に。患者が待合室からロビーにあふれ、一般利用者や職員の二次感染が懸念される事態になっていた。コロナ禍となり、2020~22年度は4千人台で推移したが、23年度は、前年同期と比べ増加している。
 患者の増加などを受け、市は18年から医師や学識者らで構成する委員会を設置、診療所の在り方について検討を始めた。今年4月の委員会で市は診療所の「移転の必要性」にも言及した。だが移転先などの構想や案については「内部検討中」として、明らかにしていない。
 診療所を設ける時点で、患者があふれる事態の想定は難しかったのか。そしていつ、こうした事態は解消できるのだろうか-。現場を取材してあらためてそう感じた。
 「寒いでしょ。体調に気を付けてね」。短時間の取材にもかかわらず、スタッフからそう気遣われた。こちらの苦労など医療従事者には遠く及ばない-。申し訳なさを抱えながら午後10時ごろ、現場を後にした。

発券機近くで対応するスタッフ=佐世保市

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