連載[新潟2023年 ヒット!話題!アレコレ♪]<上>「藤井聡太八冠 特需」 パワーの源は新潟食材の"勝負メシ"、「同じもの食べたい」 洋菓子店や旅館にファン続々と 「化粧品」「チョコザップ」

新潟伊勢丹で化粧品の相談に乗るスタッフ(右)=新潟市中央区

 2023年も残りわずか。ことしは新型コロナウイルスが感染法上の位置付けの5類に移行。長引く感染禍の影響が和らぎ、外出する人や旅行者の姿が目立つようになった。一方、物価高を受け、財布のひもが固くなる人も少なくない。こうした中、企業は工夫を凝らし、消費回復に向けた商品やサービスの提供に力を入れてきた。ことしヒットした商品や話題になった出来事を振り返る。(2回続きの1回目)

* [連載<下>はこちら](https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/334273)

 10月の王座戦を制し、将棋の全8タイトル独占という偉業を成し遂げた藤井聡太八冠。ことし、新潟県でも2度タイトル戦に臨んだ。インターネットでの配信番組の効果もあり、将棋ファンの裾野は拡大している。対局途中の「勝負メシ」やおやつも注目され、県内にも特需がもたらされた。

 藤井さんの防衛が決まった棋聖戦第4局は、旅館の髙島屋(新潟市西蒲区)で7月に指された。

 午前のおやつに選んだのは洋菓子店プレジール(新潟市西蒲区)のケーキ「フレーシュピーチベリー」。スポンジ生地をたっぷりの生クリームで覆い、桃やイチゴで彩っている。昼食は髙島屋が対局に向けて考案した、新潟県産毛ガニのカニクリームコロッケだった。女将(おかみ)の髙島基子さんは「藤井先生に『おいしかった』と言ってもらった」と笑顔で話した。

 対局後、藤井さんの地元・愛知県などからの来客が増加。竹林に面した対局の間「常磐」は内湯と露天風呂を備え、宿泊費は1人7万円程度と高級だが、宿泊客が1割は増えたという。プレジールではケーキを1804円で販売し、1日20個ペースで売れるなど好評だった。季節のアレンジを加えて販売を続けている。

 藤井さんが挑んだ棋王戦第3局は、新潟グランドホテル(新潟市中央区)で3月に行われた。ホワイトチョコのムースと越後姫を載せたケーキ「苺(いちご)のホワイトガトー」が振る舞われた。販売は終了したが、担当者は「数週間にわたり県外客を中心に注文が相次ぎ、数を増やして対応した」と波及効果を実感していた。

◆<化粧品>
 "脱マスク"で高まる美意識、男性客も増加中⤴

 新潟伊勢丹(新潟市中央区)では感染禍を経て、ビューティーアドバイザー(BA)が化粧品を客の肌に乗せる接客が復活した。ノーマスクで外出する機会が増えた影響か、口紅の売り上げが前年比2割程度上がった。化粧品売り場を訪れた新潟県田上町の看護師の女性(25)は「リップを気にする機会が増えた」と話した。

新潟伊勢丹で化粧品の相談に乗るスタッフ(右)=新潟市中央区

 感染禍では高価格帯のスキンケア用品が伸び、現在も売り上げを維持しているという。バイヤーの中村護さん(44)は「肌への意識が高まっていると感じる」と語る。

 広告に男性を起用しているブランドが増えており、男性客の姿も目立つようになったという。複数のブランドを扱う「サークルビューティー」リーダーの本多千晶さん(30)は「ユーチューブやSNS(交流サイト)を見て『この商品を使いたい』と相談に来る男性が多い」と話した。

◆<チョコザップ>
 低価格、着替え不要で手軽に運動…会員100万人突破で破竹の勢い

 RIZAP(ライザップ)グループが運営する小型のフィットネスジム「chocoZAP(チョコザップ)」が破竹の勢いだ。月額3278円の低価格に着替えが不要という手軽さが初心者の心をつかみ、昨年7月の本格展開から1年強で会員数は100万人を突破した。追加料金なしで美容器具も使い放題にするなど、従来型のジムとは一線を画す。

「chocoZAP(チョコザップ)」の店内のイメージ

 「結果にコミットする」の売り文句で高額の個人指導ジムを浸透させたライザップ。チョコザップの特徴は24時間、無人営業だ。スマートフォンで入会手続きを済ませ、専用アプリで鍵を開けて利用する。プールやシャワーといった施設は省いた。革靴やスーツでのトレーニングも認めており「ちょっとした隙間時間にも通いやすい」(40歳男性会社員)と好評だ。

 運動が苦手でも通いたくなる仕掛けが充実している。美容関連では歯のホワイトニングや、ネイルアートの機器を設置。マッサージチェアやドリンクサーバー、ゴルフの練習設備も会費のみで使える。瀬戸健社長は「大変とかつらいとかではなく、行ってみたくなる(場所にしたい)」と狙いを語る。

 会員数の増加に合わせ、出店ペースも加速している。11月14日時点で、新潟県を含む全国40都道府県に1160店舗を構える。会員はどの店舗でも利用できる。

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藤井聡太八冠が食べたカニクリームコロッケとプレジールのケーキ
「chocoZAP(チョコザップ)」の店内のイメージ
7月に棋聖戦第4局が指された髙島屋の客室「常磐」。軸物は対局する2人の棋士の若々しさや、使用された「竹風駒」に合わせ、女将が選んだ=新潟市西蒲区

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