ミュージカル界に新たな「正解」を生む注目女優・小南満佑子

舞台で培った身体表現を「形に残したい」と、10月に初の写真集を発売したミュージカル女優・小南満佑子。彼女といえば、ミュージカル『レ・ミゼラブル』をはじめとするグランドミュージカルで数々のヒロインを務め、その高い歌唱力は朝ドラ『エール』のなかでもフィーチャーされたこともある実力派女優だ。

ミュージカル界で幅広く活躍する小南満佑子。兵庫県・西宮市出身の27歳

今回のインタビューでは、そんな「生粋の優等生」としてまっすぐ歩んできた小南が「ボーダレスに挑戦したい」との思いで挑んだ写真集『Luce』のこと、また今後の野望について話を訊いた。

写真/バンリ

■「20代前半は『イメージ』に固執しすぎていた」

──今回、写真集を出されると聞いたとき正直、意外だなと驚きました。というのもこれまでの役どころはすごくピュアな清純派、しかも黒髪も27年間1度も染められたことがないとお聞きしたりと、真面目なイメージがすごくあったので。

まず水着とかランジェリーとかいうものを着てる姿を出したことがなかったですし、今までいただいてきたお役も清純なものが多かったのでギャップというか・・・「大胆」と捉えられた方もいたのですが、結構良い反響も多くて。「かっこいい」と言ってくださる方が多くいたんです。

黒髪を維持する理由はいくつかあり、そのひとつは「海外に行ったとき、黒髪ロングはウケる」

──どういう経緯から「写真集」を出すことに? 東京での会見では「CDデビューよりも先に写真集出しました!」と仰っていましたね。

ダンスやバレエでトレーニングを積んできたこととか、舞台で培った身体表現を「形に残したい」とはずっと思っていました。やっぱり舞台は形に残るものが少なくて、あっても扮装の写真だったりする。培ってきた経験はどれも素晴らしいものだけど、ありのまま・等身大の小南満佑子を出せていない気がしていたんです。

もちろん、舞台女優としてCDデビューには憧れがあるけど、人と違うことをやりたいっていうのが私のなかで常にあって、そこにみなさん惹かれていってほしいなというのがあったので。

長い手足に抜群のプロポーションを持つ小南、舞台上では一際存在感を放つ

──これまで順風満帆に「演じること」に生きてきたように見えていました。どういったタイミングでありのままを見せたい、と思いはじめるようになったんですか?

お仕事をさせていただくにあたって、特に20代前半は「作品のために」「作品のイメージを保とう」と、真面目さがすごく出ていた部分もあって。清純なお役をいただたときはプライベートでも「スカートを履かないと」と思ってしまったりと、ある意味固執しすぎていました。自分のなかで鎧を揃え過ぎていたんです。

──『レ・ミゼラブル』に初めて出演されたのは18歳のとき。オーディション時はまだ学生だった小南さんは、急に大人の環境へと足を踏み入れた。

そこは大きかったですね。当時は先輩しかいない環境で「新人」というものに甘えちゃいけないと思っていて、鍛えていただいた部分も大きかった分、足引っ張ったらあかん、おりこうな優等生のように「こうしておかないと」と自分で自分を閉じ込めてきていたのですが、20代後半になってきたらそういった鎧がだんだん取れてきて「もう開放しちゃえ!」と。

そして、だんだん自分自身の潜在的な個性や「小南満佑子の表現力」を探求するようになり、周りに「私の強みって、どんなところやろ?」と、訊いていた時期もありました。

「ナチュラル&ヘルシーに見せられるように心がけたので、女性の方にこそ手に取っていただきたい」

■「外国人体型なので、衣装を選ぶのが大変」

──ちなみに、そのコンプレックスとは?

プロポーションに関しては、すごく外国人体型なので、衣装を選ぶのが大変なんです。舞台では役によっては、バストが大きいっていうのでさらしを巻いたりもしていて。そういう部分でコンプレックスに感じていた部分を、20代も後半になってきて「(写真集は)かっこよく見せるにはすごく良いアプローチなんじゃないか?」とマネージャーにも言ってもらいました。

あと、これまで自分はあまり好きではなかったそばかすも、ヘアメイクさんに「それ、すごくいいよ」って言ってもらえたり、第一印象で「唇がいい」と血色感を褒めてもらったりとか、客観的に良いと思ってもらえるものを知ることで「ここ、強みにできる」と思える。この写真集を通して、自分に自信が持てるようなりました。

「それいいね!と客観的に褒めてもらうことで、自分の強みになるし、自信が持てるようになる」

──写真集を出したことで、表現する上での意識の変化などはありましたか? それこそ写真集発売後にはシチュエーションコメディと題された舞台『NOISES OFF(ノイゼズ・オフ)』で、これまでの作品では見られなかった「お笑いどころ」にも挑戦されていましたね。

今回、等身大をバーンと出させてもらったことによって、今までひとつの引き出しで勝負していたものが、いろんな引き出しを出せるようになってきた、その引き出しを出すことに抵抗がなくなったというのがすごく大きいかもしれません。

今年やらせていただいた役が『キング・アーサー』では王妃・グィネヴィアから始まって、『ヴァグラント』では警察隊長、『NOISES OFF』では舞台監督助手でメガネをかけて、ほぼほぼメイクもせず、お団子頭にペンさして走り回ってるみたいな役。

2023年は役の振り幅がすごく大きくて、そこに写真集も出させてもらって・・・と。いろいろな小南満佑子をお客さまにお届けできたのでは? と思っていて、それは表現者としての醍醐味というか、役者冥利に尽きる年だったと思います。

2023年を振りかえり「役者冥利に尽きる年」とまとめる小南

■「大河ドラマや時代劇にも挑戦してみたい」

──今後の目指すところを知りたいです。

ミュージカル女優は舞台一筋、アーティストさんだったらアーティストさん、ダンサーだったらダンサーさんと、日本はまだまだ海外に比べてカテゴライズされがち。この10年ほどでミュージカルブームと言われてミュージカルの裾野も広がってきているとは感じますが、実際のところはまだまだ。

昔から「あらゆるジャンルに対応できるように」と、ダンスに声楽、お芝居と色々勉強させてもらってきた主軸はあるので、これからはいち表現者として、何でもトライしていきたいと思っています。それこそ大河ドラマや時代劇にも出たい。黒髪やピアスをこのために守り続けてきた、といっても過言ではないので(笑)是非挑戦してみたいですね。

舞台だけでなくボーダレスに活躍したいとの思いを持つ小南、今後の活躍にも期待したい

決められたレールや「カテゴライズ」という枠組みを飛び出し、歩みはじめたひとりの表現者・小南満佑子。今回の写真集発売の裏側には、そんな彼女の大きな野望があった。必至の努力を重ねてきたからこそ咲く花は一段と輝いて見える、これからも人々が「アッ」と驚くような新世界を作っていってほしい。

写真集『Luce』は全国の書店やオンラインサイトなどで発売中。

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