高校生による高校生のためのソーシャル部活動「#せかい部」とは!? 中心メンバーである北海道の女子高生に迫る

現役高校生たちが、海外にちょっと興味があるけど、留学はハードルが高いなと思っている同世代に対して、海外の魅力をInstagram等で発信したり、イベントを開催したりしている『#せかい部』というグループがある。高校生たちはどんな思いで活動しているのだろうか。そこで運営の中心メンバーである北海道の高校2年生・秋山花音さんから、活動のきっかけや目標などを聞いた。

「両親は旅行が趣味で、幼い頃からハワイやグアムに家族旅行で行く機会がありました。父が、子どもには世界を知ってほしいと思っていたようで、日本から比較的距離の近い国々を連れて行ってもらっていました。そのため、海外は身近でしたが決して幼い頃から英語学習や留学に興味があったわけではありませんでした。」

秋山花音さん

その後、英語教育に力を入れている中高一貫校に進学した秋山さんだったが、実は英語に対しては苦手意識があったという。飛行機も嫌いだったくらいで、海外に積極的に行きたいとは思えなかった。だが、コロナ渦で何もやることがなく、単調な生活の繰り返しだった時に、両親から「何か一つやってみたら」と言われて、英語を勉強することにした。

「まずは英検3級合格を目指して、オンラインの英会話レッスンなどを受けるなど少しずつ勉強を始めました。だんだん話せるようになるにつれて、英語の勉強が楽しくなってきたんです。すると、自分が勉強してきた英語がどれくらい通用するのかが気になり、留学に関心を持つようになりました。でも、コロナ渦だったので海外に行く機会はありませんでした。そんな時に#せかい部と出会いました。オンラインイベントに2~3回ほど参加してみて、自分と同じ関心を持った同世代と出会えてとても楽しかったです。また、イベントを運営しているのも同世代ということで本当に素敵だなと思いました」

ハイブリッド開催したイベントで参加者と

#せかい部は2018年スタートした高校生による高校生のためのソーシャル部活動。もともとは、文部科学省が行うトビタテ!留学JAPAN新・日本代表プログラムという高校生・大学生の留学を支援するプログラムが、すでに留学したい人への奨学金等の支援に限定されていることに対して、ちょっと留学や海外に興味があるけどまだ一歩踏み出せないといった潜在層に対しても、留学や海外を身近に感じてもらうアプローチができないかということではじまった。

「私が特に印象に残ったのは、#せかい部文化祭というイベントです。参加者の高校生がテーマごとのブレイクアウトルームに分かれ、そのテーマについて話しました。自分は音楽がテーマのルームに参加しました。そこで、K-POP仲間が見つかってとても楽しかったです。また、自分は北海道に住んでいるので、本来なら他の地域の方とは出会う機会がありませんが、このイベントを通して日本各地の高校生と仲良くなれました。これもとても楽しかったです。そして、自分もこんなイベントを企画して、誰かと誰かが交流を通して出会う場を作りたい、身近な興味から海外に関心を持つことができる機会を作りたいと思いました。そこで、ちょうど運営メンバーを募集していたので応募することにしました」

カナダ大使館に訪問

#せかい部は、高校生による高校生のためのソーシャル部活動であると前述したが、それはメンバー募集においても徹底されている。個人情報の管理を除くと、募集や選考はすべて高校生の運営メンバーが実施している。一度の募集が数人と枠が少ないこともあるが、倍率は常に10倍を超えるほどの人気だという。

「実は一度面接で不合格になったんです。でもどうしても諦めきれなくて。当時、人前で話すのがとても苦手だったので、それが不合格の原因だと思い、話し方の練習をしました。自分が何を話すか、こんな質問がきたらこう答えようというリストを作って頭にたたき込みました。いまではあまり良くないやり方だったと思いますけどね(笑)そうして、再度チャレンジして運営メンバーになることができました」

話すのが苦手だったという秋山さんだが、そんな姿はいまではまったく想像できない。それは、定期的に行われるミーティングで、大人と話したり、イベントでファシリテーターとして参加者と関わったり、壇上に立って#せかい部について説明したり、たくさんの人前で話す機会のお陰で場慣れしたという。

「自分が中心となって企画したイベントを開催した時に、参加者の方から『本当に楽しかった』『いろんなお話を聞けて良かった』と言われて、1年半やってきて自分が目指していることが少しずつ達成されているなと感じています」

秋山さん自身も、留学に2回チャレンジした。1回目は高校1年生の1月。カナダへ1ヶ月語学留学に行った。語学学校に日中通いつつ、ホームステイをした。

「初めての留学で、しかも1人で海外に行くので不安だらけでした。ネイティブスピーカーが話す英語を聞き取るのはなかなか慣れず大変でした。また、生活することで必死で外に出かけることができず、家に閉じこもることが多くなってしまっていました。ホームシックにもなって、母親から持たせて貰った日本茶のパックを見ただけで、涙してしまうことも。初めて親元から離れて生活をして、良い経験だったと思いますが、苦い経験にもなりました」

初めての留学だったカナダ

2度目の留学は、今年の8月にトビタテ!留学JAPANを利用してアメリカ・ポートランドを訪ねた。語学学校に通いつつ、興味を持ったテーマについてフィールドワークにも取り組んだ。

「1回目の反省を踏まえて、なるべく外に出るようにしました。毎日どこかに出かけることを目標に設定し、授業後にショッピングに行ったり、少し離れたアイスクリームやさんに行ったりしました。また、地元札幌市の地域経済や地域振興に関心があり、まちづくりをテーマに学校で探究学習を進めてきました。そこで今回、世界一住みたい街と言われたポートランドで、現地の大学講師にインタビューしたり、地域団体の会議に参加したり充実した日々を過ごしました。ポートランドの持続可能なまち作りを学ぶことができました」

アメリカ・ポートランドにて

もうすぐ高校3年生になる秋山さん。最終学年となり、#せかい部の次期部長に立候補している。最後にこれからの展望を聞いた。

「誰かと誰かが出会う場をもっと増やしていきたい。また、日本の文化と違った文化に触れる場をもっと作りたい。その思いは変わらないですね。新型コロナウイルスが落ち着き、高校生の海外旅行や留学が徐々に増えているタイミングなので、#せかい部の活動もより積極的にやっていきたいと思います。また、このタイミングだからこそ、対面で会える機会を作っていきたいと思います。私もたくさんの方と交流して、話を聞きたいです。人と人と出会うことができる場、海外の魅力に気づける場を作ることを引き続き軸に来年の活動もしていきたいと思います」

カナダ大使館に訪問

#せかい部はInstagramなどのSNSをフォローしたら誰でも部員になれるとのこと。ちょっと留学や海外が気になっている高校生のみなさん。まずはSNSをフォローして新しい世界を覗いてみてはいかがだろうか。

谷村一成

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