倒産増加率が30年ぶりの高水準 ~ 企業、個人とも「自己防衛」の時代に ~

2023年はコロナ支援の反動や物価高、人手不足などで倒産が急増した。増加率(前年比)は、リーマン・ショックやITバブルを大幅に上回り、バブル崩壊後の1993年以降では最大だ。抑制傾向が続き、緩慢になっていた倒産への危機意識が必要な時代にと突入した。


2023年1-11月までの負債1,000万円以上の倒産は7,880件に達した。すでにコロナ禍の2020年(7,773件)、2021年(6,030件)、2022年(6,428件)の各年の年間件数を超えた。集計中の12月を含めると、2023年は8,000件台半ばを超える勢いで、前年比では30%増の可能性もある。前年比は、2008年のリーマン・ショックが11.0%増、2000年のITバブル崩壊が22.2%増だった。これをはるかに超える勢いだ。

東京商工リサーチが12月に実施したアンケートによると、2024年は自社業界の倒産が「増える」と回答した企業が約6割(56.7%)に達した。「減る」はわずか3.7%で、企業の警戒感は高まっている。倒産が「増える」と回答した業種上位は、2024年問題を控える「道路貨物運送業」で85.5%、出版や広告制作など「映像・音声・文字情報制作業」、コスト増が続く「農業」がそれぞれ83.3%と続く。

審査部門の強化急ぐ

ある専門商社では、減員が続いていた審査部門を久しぶりに増員した。焦付の増加で与信調査の徹底が上層部から命じられたという。冬の時代が続いた審査部門の強化を急ぐ企業が増えている。
別のリース会社の審査担当者は、「2023年は倒産が増えて取引を断るケースが増えた」と耳打ちする。金利引き上げ交渉も始まったが、若い担当者は経験がなく初の経験に苦戦しているという。
消費者向けサービスを提供する企業の倒産も目立つ。脱毛サロン「銀座カラー」運営会社は12月15日に破産した。会員債権者は約10万人に及ぶ。同月には歯科医院も破産し、治療中の患者約2,600名が被害を受けた。


倒産は2001年の1万9,146件と比較するとまだ半数にとどまる。だが、倒産にカウントされない廃業も高水準で、私的整理の枠組みが整いつつある。自社(自分)とかかわりのある企業が事業を辞めたり、債務整理に着手する可能性が高まっている。
企業も個人も企業の経営状況への「防衛力」アップが必要だ。廃業や私的整理が叶わず、倒産した場合の被害は大きい。有名、老舗、業績が伸びている…。これらは資金力とは無縁の評価だ。2024年は、我が身を自分で守ることがより重要になり必要そうだ。

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