ウェブ調停、浸透じわり 茨城・水戸家裁 登庁省略や安全確保

水戸家裁で導入されているウェブ調停のイメージ=水戸市大町

離婚や遺産分割などを巡る話し合いで家庭裁判所と当事者をオンラインで結ぶ「ウェブ調停」が浸透しつつある。司法手続きIT化の一環。コロナ禍が後押しする形で2021年に試験的に始まり、22年には水戸家裁でも導入。登庁の手間が省けたり、当事者の安全確保が図れたりする利点があり、新たな手段として増加が見込まれている。

家事調停は離婚や子どもの養育費、相続など夫婦や親子、親族間のトラブルについて、裁判官や調停委員で構成する調停委員会が間に入り、非公開の話し合いで解決を目指す手続き。司法統計によると、水戸家裁で扱う新規の家事調停事件は例年3千件前後。コロナ下では感染予防のため電話調停が急速に広まったが、裁判官らが当事者の表情を見て話せなかったり、弁護士以外の同席を確認しにくかったりする課題があった。

ウェブ調停は21年12月、東京や大阪など4家裁で試験的に導入。22年10月には水戸など19家裁でも運用が始まった。水戸家裁での実施件数は今年11月末現在で59件(速報値)。全国では既に1万件を超え、普及が進んでいる。

同家裁によると、ウェブ調停の可否を判断するのは調停委員会。主にドメスティックバイオレンス(DV)などで接触を避ける必要性がある場合などに利用されるという。

離婚やDVの調停ではこれまで、当事者が相手方から待ち伏せされるなどの不安を抱く人も少なくなかった。しかし、民事訴訟法が昨年5月に改正され、離婚手続きなどを全てオンラインで完結できるようになった。また、ウェブ調停では当事者の都合も合わせやすくなり、養育費の調停など迅速な協議が求められるケースでの活用が見込まれる。

オンライン会議のため回線不良や情報漏えいの可能性、インターネットが利用できない当事者への対応などウェブ調停を巡る課題は少なくないものの、同家裁は「当事者のニーズに対応するツール。当事者が利用しやすい環境を整えながら対応していきたい」としている。

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