2023年 為替レートの振り返り

 ■7月まで4回のFOMCの利上げで円安が進行した

 2023年の東京外国為替市場のドル円レート(終値ベース)は、1月4日に132円60銭台でスタートした。1月は5日に133円30銭台まで円安が進んだが、その後は円高方向に振れ、12日に130円を割り込み、その後は月末までおおむね127~130円台で推移した。

 その状況が一転したのが2月6日で、一気に132円60銭台へ円安進行。2月1日、FOMCが0.25ポイントの利上げを決定してアメリカの長期金利が上昇し、日米金利差が拡大してドル高円安が進んだことが影響している。15日には134円台に乗せ、24日には136円台へ円安が進む。

 3月に入ると8日に137円20銭台をつけるが、その後は13日に133円台20銭台、3月22日にFOMCが0.25ポイントの利上げを決定したにもかかわらず、24日には130円70銭台まで円高進行。それでも年度末の31日には132円80銭台まで円安方向へ戻している。

 年度替わりの4月前半は131~133円台の水準だったが、17日に円安に振れて134円台に乗る。4月28日に一気に136円30銭台まで円高が進行し、5月は1日、137円を突破して始まる。5月3日にFOMCが0.25ポイントの利上げを決めた。その後は10日の134円30銭台まで反転するが、月末に向けて大きく円安進行。17日に137円、18日に138円、25日に140円を突破した。

 6月はFOMCが利上げの見送りを決めた14日の翌日、15日まではおおむね138~140円台で安定するが、16日に141円、22日に一気に143円を突破した。27日には144円台に乗せて上半期を終えた。この頃には、FRBの金融政策について「利上げはそろそろ終わりを迎えるだろう。いつ利下げモードに入るか?」が、ウォール街の「総意」になりつつあった。

 7月は6日まで144円台を保つが、その後に円高が進んで12日に140円を割り込む。それでも13日の138円00銭台で反転し、20日には140円台に戻る。7月26日、FOMCが0.25ポイントの利上げを決めるが、これを最後に9月、11月、12月のFOMCでは金利は据え置きとなっている。

 ■日銀総裁「チャレンジング」発言で円高進行

 8月に入ると猛暑と歩調を合わせたかのように円安が進行し、1日に143円を超える。14日には145円をオーバーし、16日には146円30銭台まで円安が進む。8月後半はおおむね145~146円台で推移した。

 残暑厳しい9月も円安の流れはやまず、5日に147円台、20日に148円台、26日に149円台に乗る。10月25日には150円を突破し、31日には151円を超えた。11月13日には151円65銭という終値ベースの2023年の円安ピークをマークした。

 しかしそこから円高方向に反転し、11月17日に150円を割り込み、12月にかけて流れは円高に傾く。11月28日には147円台、12月1日には146円台、7日には一気に143円台へ円高が進行した。その7日、国会で植田日銀総裁が金融環境について「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになると思っている」と発言し、それが近いうちのマイナス金利政策解除の憶測と、「日本の長期金利上昇→日米金利差縮小→為替のドル安円高」の連想を呼び、14日には141円80銭台まで円高が進んでいる。12月29日、141円22銭で東京外国為替市場は2023年の取引を終えている。

 2023年、日本銀行は金融緩和政策の変更を行わず、上限の変更などYCC(イールド・カーブ・コントロール)の細かい手直し(柔軟化)は行っても、マイナス金利政策自体は全く修正しなかった。そのため、為替市場は大部分、アメリカFOMCの動向に大きく左右される一年だった。12月の「チャレンジング円高株安」も、結果的には言葉尻をとらえて憶測が憶測を呼ぶマーケットの勇み足のような様相を呈した。

 12月13日のFOMCでは2024年の利下げがはっきり示唆されており、それにもし、日銀会合でのマイナス金利政策解除が加わるとしたら、日米金利差はさらに圧縮し、2024年の為替市場のトレンドはドル安円高が明確になりそうだ。12月の円高傾向には、それを先取りするムードが漂っている。(編集担当:寺尾淳)

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