不登校やひきこもりの子を支える「あいのいえ」 元校長が自宅に設立「一歩を踏み出せる心のよりどころに」

 沖縄県中頭地区の公立中学校元校長で3月に定年退職した長嶺加恵美さん(61)は同僚だった福地たず子さん(61)と共に、不登校やひきこもりの児童生徒を支援する一般社団法人「あいのいえ」を設立した。読谷村渡慶次の自宅の一部を開放し、運営している。37年間の教員経験を生かし、子の居場所として受け皿づくりをしたいという。「ここから一歩を踏み出す心のよりどころにしたい」と意気込む。(社会部・新垣亮)

 文部科学省の2022年度調査によると、県内の小中学校(国公私立)の不登校児童生徒は前年度より1327人増えた5762人で過去最多を更新。小中の千人当たりの数は全国平均より6.4ポイント高い38.1人とのデータもあり、喫緊の課題となっている。

 同村や周辺の嘉手納町、恩納村などには民間の受け皿がないこともあり、長嶺さんらが法人設立に動いた。

 きっかけは長嶺さんの校長時代の経験にある。入学から一度も学校に顔を出さなかった生徒がいた。卒業式は校長室。本人に直接卒業証書を手渡すことはできず、保護者に託した。

 学校へ行けない事情がある児童や生徒たちは少なくない。簡単には言葉で言い表せない感情もあり、保護者でさえ真意が分からないこともあると考える。「卒業後、社会から孤立してしまう可能性が高くなるのではないか」との気がかりが長嶺さんの背中を押した。

 11月から本格稼働した「あいのいえ」には現在、小5~高校中退者など計8人が通う。月、火、木、金の週4回開所し、利用料は無料。学習や生活、就労支援の他、体験活動など個人のニーズに合わせてプログラムを提供する。長嶺さんは代表理事、福地さんは理事を務め、ボランティア3人を含む5人で運営している。

 長嶺さんは少子高齢化社会を見据え「社会の担い手である子や若者を育むのは未来への投資」と強調。「自分の存在を受け入れ、他者との関係を築けるような場所にしていきたい。ここから一歩踏み出せるようになればいい」と話し、学校などの関係機関とも連携を図りたい考えだ。

 「あいのいえ」では居場所スペースの改装や備品の充実を図るため、1月末までクラウドファンディングを実施している。詳細はこちらから。

不登校など児童生徒らの自立支援に向け、「あいのいえ」を設立した長嶺加恵美さん(左)と福地たず子さん=読谷村渡慶次

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