生物は四季の間で進化するか? 千葉大学が季節変化に伴うハエの進化を発見

千葉大学とかずさDNA研究所のグループは、ショウジョウバエがたった半年の季節間で急速な進化をしていることを見出した。

一般に生物の進化は、数千年、あるいはそれ以上の長い時間スケールの中で生息環境に対応して起こると考えられている。一方で、環境は四季を通じて大きく変化しており、昆虫のように1世代が短い生物では、季節と季節の間で進化を引き起こす原動力(選択圧)が異なることが予想される。

これを検証するため、本研究では、1世代の長さが数週間であるキハダショウジョウバエの表現型(特徴)が季節に沿った変化をしているかを調べた。表現型の違いが、測定した季節の環境条件(温度や湿度)によるものではなく、進化によるものであることを適切に評価する必要があるため、越冬後(2月中旬~3月上旬)に採集した「春世代」と、越夏後(10月上旬~11月上旬)に採集した「秋世代」のハエをそれぞれ実験室内の一定環境下で飼育・繁殖させた。「春世代」と「秋世代」ともに遺伝的に近い親からの交配を繰り返し行って近交系統を確立し、これを用いて継代した個体の表現型を同時測定することによって、環境要因の影響を取り除いて比較することができる。

こうして、進化に由来する表現型の違いの検出を試みた結果、「春世代」と「秋世代」の間で体サイズと高温耐性に顕著な変化を認めた。「春世代」に比べて「秋世代」は体サイズが大きく、高温耐性が高いことがわかったという。つまり、夏を経験することで高温耐性を高め、冬を経験することで高温耐性を失うような、季節に対応した急速な進化が起きていることを示した。

本研究成果は、生物が季節による環境変化に対して超高速な進化を起こしていることを示唆する貴重な証拠だとしている。

論文情報:

【Scientific Reports】Rapid seasonal changes in phenotypes in a wild Drosophila population

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