世界初 売場カメラとAIで自動値下げ 品物の充足状況に複数のデータ組み合わせて判断 流通革命に挑むトライアル④

トライアルホールディングス傘下でIT技術を提供する事業会社のRetail AI社は、世界初の試みとして、売場カメラとAIによる自動値下げのシステムを開発。2022年4月20日にオープンした「トライアルGO脇田店inみやわかの郷」(以下、脇田店)に同システムを導入して精度を高めるべく実証実験を行っている。

廃棄ロス削減ほか店舗の荒利最大化や店舗業務の省人化が目的。

脇田店では、惣菜と寿司の2つの売場で実験。両売場の真上にそれぞれカメラを設置して、時間の経過とともに変わる品物の充足状況をカメラとAIが把握し、過去の販売データや在庫データを組み合わせて自動的に値下げを判断する。

カメラとAIは、電子棚札と連動しており、値下げが判断されると自動的に電子棚札に表示されている価格が値下げへと変更される。会計とも連動し、レジで商品をスキャンすると値下げされた価格が表示される。

5月17日、同店で取材に応じたRetail AIの永井義秀氏は「当日の売れ行き状況によって値下げのタイミングを早くしたほうがいいか、それとも遅くして大丈夫なのか。時間帯ごとにどう変化していくのかを逐次捉えてAIが自動で値下げを判断する」と説明する。

値下げが判断されると自動的に電子棚札に表示されている価格(写真左)が値下げ(写真右)へと変更される

時間帯を限定して把握・分析している点もポイント。カメラを24時間回しっぱなしにすると巨大なサーバーが必要となりコストが嵩むためだ。

実証実験開始から1年が経ち、オペレーションは「一定レベルで削減・改善できるところまできている」という。

廃棄ロス削減効果についても「定量的な数字は公開できないが、従業員が判断している既存店舗と比べて売上げや廃棄削減の数字が改善されてきているところは実験の結果で見えてきている」と語る。

そのほか、調理時間や賞味期限が異なる商品が1つの売場で混在するケースへの対応を課題に挙げる。

「課題はいろいろあるが、脇田店や他の店舗で実験しながらバージョンアップを図っている。トライアルGOで確立されたフォーマットをメガスーパーやスーパーセンターなど他の店舗フォーマットに順次展開していくことも考えている」と意欲をのぞかせる。

脇田店は、福岡県宮若市との官民連携協定における共同事業として最先端のIT技術を導入した次世代スマートストアの位置づけとなる。

日本初となる酒販売の年齢確認不要とする24時間顔認証決済も導入されている。

*流通報道記者会で5月取材

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