味の素AGF、徳之島コーヒー生産支援を強化 平地でも高い防風効果が見込める「平張りハウス」実証実験とコロンビア技師の招聘で

味の素AGFは、2017年から継続している徳之島コーヒー生産支援プロジェクトを強化する。

主な強化策は、「平張りハウス」の新設とコロンビア技師の招聘の2つ。

徳之島でのコーヒー栽培において最大の課題は台風対策。

「平張りハウス」の最大の特徴は、平地でも高い防風効果が見込める点にあり、コスト面などの課題をクリアして普及が進めば、平地での栽培が可能となり収量アップが見込める。

同プロジェクトの主体となる徳之島コーヒー生産者会では、現状、カポックや千年木(センネンボク)などの防風林で対策を講じている。

防風林でも台風対策になりうるが、新規参入者にとって防風林づくりを伴う参入は重荷になるとの見立てから、新規参入の間口を広げるべく「平張りハウス」の実証実験を推し進めている。

「平張りハウス」は、AGFの支援により、23年9月、徳之島コーヒー生産者会副会長の泉さんの農場の一部に新設された。今後、「平張りハウス」への苗木の植樹が予定されている。

技師が農園を回る様子

AGFは生産技術の向上にも貢献。

12月5日、AGFは丸紅と協力してコロンビアから技師を徳之島に招聘。土壌学の修士号と植物生理学の博士号を持つ農業エンジニアが、徳之島コーヒー生産者会の農園を巡回して栽培についてアドバイスした。

コロンビア技師招聘の狙いについてAGFは「生産者や我々の知見のみでは解決が難しい課題への対応や、安定した生産に向けた改善方法を知るため、専門家に実際に見てアドバイスをいただきたいと考えた」と説明する。

AGFの第一実証農場と第二実証農場では順調に育成が進んでいる。

「実証農場開始から約5年で本格的な収穫というのは順調だが、私たちの更なる目標に向けて、そろそろテコ入れをしたい」(AGF)と意欲をのぞかせる。

同社は「まだ全国で販売できるような収穫量ではないが、9月にオープンした伊仙町の新庁舎のカフェスペースで徳之島コーヒーのテスト販売を行った。生産者の方がいただいたアドバイスなどを活かして、1本の木からの収穫量を増やせるよう、引き続き生産支援を続けていく」とする。

AGF第一実証農場のコーヒーの実

徳之島コーヒー生産支援プロジェクトは、2017年6月に伊仙町役場、徳之島コーヒー生産者会、丸紅、味の素AGFの4者が契約締結し開始した。

丸紅は種の提供や世界の産地の技術情報提供をし、味の素AGFは防風対策の支援や肥料などの提供を行う。

伊仙町役場はそれらの橋渡しやPR活動を行い、徳之島コーヒー生産者会が実際にコーヒーを栽培している。2023年現在、徳之島コーヒー生産者会の会員は30人前後にのぼる。

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