「甲子園」だけなら阪神はV27!ファンが独自視点の虎カレンダー作成 連覇ない阪神「ARE」の法則も

甲子園球場(1924年完成)が新年で誕生から100周年を迎える。節目の年、兵庫県芦屋市在住の会社員・大森正樹さん(56)が独自の視点で2024年版・阪神タイガースのカレンダーを作り上げた。その内容を紹介し、筋金入りのファンである大森さんに思いを聞いた。(文中選手敬称略)

大森さんは1967年、東京生まれ。小学生の頃から虎ファンで、大学を卒業した89年、就職を機に兵庫県に移住。2005年から毎年テーマを変えて非売品のカレンダーを自主製作している。24年版のテーマは2つ。まずは「甲子園球場しか存在しない世界でタイガースは…」と題し、甲子園で行われたプロ野球公式戦の勝敗結果をまとめ、その統計をカレンダー上でデザイン化した。

日本のプロ野球が始動した1936年から昨季まで、甲子園では公式戦5573試合(阪神以外のカードは789試合)が行われ、阪神は4784試合2543勝2103敗138分けで勝率5割4分7厘。試合数2位の巨人は1143試合599勝504敗40分けで勝率5割4分3厘と続く。優勝チームはシーズンごとのデータで決め、阪神は昨年、22年からの連覇で最多の「V27」を達成した。

大森さんは「甲子園100年…これは今しかタイミングがないと思いました。阪神以外のデータは私のデータベースにはなかったので時間を要しました。古い新聞を調べたり、大変でした」と振り返り、「本当は試合数も勝率もタイガースがダントツに強い!と期待していましたが、1リーグ時代の阪急は強かった。今でこそ阪神対巨人が伝統の一戦と言われていますが、1リーグ時代は阪神の最大のライバルは阪急。鉄道経営においても火花を散らした。それが、06年に阪急と阪神が統合…信じられない組み合わせなのです」と付け加えた。ちなみに、阪急~オリックスの総合勝率は329試合190勝127敗12分けで勝率5割9分9厘と阪神を上回っていた(優勝は2回)。

もう一つのテーマは「248選手はAREを知り、575選手はAREを知らない」と題した「選手の優勝経験」。

大森さんは「23年シーズン前にタイガースで優勝を経験した一軍出場選手は200人。優勝で新たに48人が加わりました。その一方、優勝できなかった選手は575人います。その全823人の出場試合数をまとめました。阪神は優勝経験者が不在になってから優勝を繰り返しています」と指摘。23年の優勝も前回05年の優勝経験者が不在になってからの栄冠だ。つまり、連覇がない阪神の優勝にまつわる〝法則〟になっている。

ちなみに、歴代の「優勝経験最後の選手」だが、62年は藤村富美男(47年優勝、58年引退)、85年は古沢憲司(64年優勝、79年に西武移籍)、03年は和田豊(85年優勝、01年引退)、23年は能見篤史(05年優勝、21年オリックス移籍)と藤川球児(05年優勝、20年引退)だった。

前回の日本一(85年)は18歳の大学1年生。大森さんは50代で味わった頂点をどのような思いで受け止めたのか。

「(リーグ優勝を決めた)9月14日は甲子園のライトスタンドにいました。本当に優勝できるんだ、自分たち(阪神ファン)だけがこんな良い思いをしていいのだろうか…そんな気持ちのたかぶりがありました。ちなみに85年以降の4回とも全て球場で見ています。(日本一については)岡田監督も言っていますが、リーグ優勝が最上位で、日本シリーズはオマケみたいな感覚があります。リーグ優勝だけでもぜいたくなのに、日本シリーズまで…という感覚。85年もそうだったのですが、絶対勝って欲しいというのは、やや弱めでした」

それでも、今回の日本一には新たな〝気づき〟があったという。

「第7戦はノイジーの3ランで(勝つ)可能性が大きいと思い、直視できました。この感覚は85年(阪神が4勝2敗で制した日本シリーズ第6戦)の長崎慶一選手の満塁ホームランと通じるものがあります。伏兵が勝負を決めた。そして今回、『日本一』がうれしいということよりも、『シーズンの最終戦が勝利で終わること』の大きさに気がつきました。03年、05年、(シーズン2位でCS突破の)14年は負けで終わったシーズンオフの憂うつが長かった。勝って終わる…この穏やかな気持ちは本当に大切なことだと認識しました」

新年に向け、大森さんは「野球界に限らず、これからは『人間性』の時代で、パワハラや昭和の根性野球の時代ではないと思います。そうした意味では、今のタイガースは選手たちの雰囲気がとても良く、勝ち負けを超えた大事なものを見せてくれると思っています。連覇を期待…もないではないですが、『正直、経験したことがないことは分からない』という気持ちです」と思いを吐露した。

「1936年のリーグ開始から存続しているのは、巨人、阪神、中日、オリックス(阪急)の4球団のみ。その中で同じ球場、同じユニホーム、同じマーク、球団旗、球団歌、そんな球団はタイガースだけです。この連続した積み重ねがあるから、データで表現できることが無限にあるわけです。また1年かけて、テーマをいろいろ考えていきたいと思います」。大森さんは早くも1年先を見据えていた。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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