多摩モノレール延伸ここまで進んだ② 箱根ケ崎方面延伸路線 2024年1月の状況を整理

多摩都市モノレールの延伸計画に関しては、2016年4月に国土交通省の交通政策審議会がまとめた答申において、『「東京圏の都市鉄道が目指すべき姿」を実現する上で意義のあるプロジェクト』とされ、3つの延伸ルートが存在します。前回の②では、現在の開業路線の南側、終点駅となる「多摩センター」駅から、JR・小田急の町田駅方面へ向かうルート「町田方面延伸路線」に関してを記しました。

(写真:あやともしゅん / PIXTA)

多摩都市モノレールの箱根ケ崎方面への延伸

今回は、以前に別コラムにてお伝えしていますが、一番進展をしている路線「箱根ケ崎方面延伸路線」に関してお伝えします。この既存モノレールの北方面の延伸路線は、沿線自治体・住民からの要望が強く、大部分のルートが新青梅街道の上空となることから用地の確保が進んでいるなどの理由から、東京都はいち早く2020年1月に工事着手の調査開始を表明しています。

この沿線には、東京都内で唯一鉄道などの駅が無い自治体・武蔵村山市があるため、この路線が開業すれば、初の鉄道駅ができる事になります。

2022年10月には都市計画決定素案等が公表され様々な過程を経て、2023年12月には東京都及び多摩都市モノレールが都市計画案及び環境影響評価書案等に関する説明会を、沿線自治体の数か所で開催したところですので、その資料に沿って現段階での計画を説明していきます。

図:東京都都市整備局「多摩都市モノレールの延伸(上北台~箱根ケ崎)都市計画案及び環境影響評価書案」資料より

今回延伸する計画区間は、多摩都市モノレールの終点で東大和市にある「上北台駅」から、武蔵村山市内を通過し、西多摩郡瑞穂町のJR八高線の「箱根ケ崎駅」までの延長約7.0kmメートルです。計画区間には7箇所の駅の設置が予定されています。

(東京都と記載されている図は、東京都の「多摩都市モノレールの延伸(上北台~箱根ケ崎)都市計画案及び環境影響評価書案」の資料からの出典になります)

モノレールがもたらす効果

図:東京都

この計画の実施により、JR箱根ケ崎駅付近から多摩センター駅までが繋がり、多摩地域の公共交通ネットワークが強化されることで、多摩地域のアクセス利便性の向上が図られるとともに、沿線だけでなく多摩地域全体の活力や魅力の向上などが期待されるとしています。

沿線となる、東大和市、武蔵村山市、瑞穂町では、モノレールの延伸による効果を最大限活用して、今後のまちづくりを進める計画になっています。

モノレール沿線まちづくり構想(東大和市 武蔵村山市 瑞穂町)の資料より

上図を見ると、バスや路面電車と比較して、輸送力やスピードには大きな差があるのが分かります。この輸送力・速達性など以外にも、駅新設による拠点や市街地の形成や、 モノレール沿線間の交流や連携の促進などという、それぞれの街づくりに良い影響が出ると考えられています。

モノレール沿線まちづくり構想(東大和市 武蔵村山市 瑞穂町)の資料より

上図は、現状の沿線2市1町間の主な移動手段となっているバスと、モノレールの運行間隔を比較しています。現在の多摩都市モノレールでは、朝8時台では7分間隔、昼12時台は10分間隔というように、定時制のある運行になっているというのは、バスに比べると大きな利点になります。

ルートと駅の設置場所案

では、今回の箱根ケ崎延伸ルートと、駅の設置場所案などを見ていきましょう。

図:東京都

上図にもあるように、この延伸区間のほとんどの区間は、新青梅街道の上に設置される予定であることが分かります。

イメージ写真:東京都

東大和市内の「上北台駅」を出たところで、モノレールは進行方向を北から西方面へ変え、新青梅街道を進むことになります。上の画像が、その交差点付近の景観予想のイメージ写真です。

図:東京都

上図が、新青梅街道を走ることになる、標準区間の標準横断図です。都市モノレールの幅は8メートル、高さは17メートルです。モノレールの下を走る道路は新梅街道となり、駅設置部及び箱根ケ崎アンダーパス付近以
外の区間では、歩道までを含めた道幅は約30メートルで計画されています。

モノレール駅の構想

図:東京都

駅部分(No.1駅~No.6駅)の標準横断図です。現在開業している区間と同様に、改札があるコンコース階の上に、モノレールに乗車するホーム階がある二層式の駅舎となり、コスト縮減などのため駅舎中央にホームのある島式ホームの駅を予定しています。

図:東京都

上は、No.1~No.6駅(仮称)の完成イメージ図です。中央帯にモノレールの支柱が建設され、両脇に片道2車線の車道があり、その外側の歩道から駅への階段・エスカレーターなどが整備される予定です。

(武蔵村山市内の駅前開発などに続きます)

初めての「駅」ができる武蔵村山市の取り組み

今回の延伸により、市内に5つの駅が開業することになる武蔵村山市では、その中の中核駅として(仮称)No.3駅の南側に、面積約2,500㎡となる駅前広場の整備を予定しています。

図:武蔵村山市 モノレール延伸に係るまちづくりに関する資料より

上図の下に記されている大型商業施設が「イオンモールむさし村山」になります。

図:武蔵村山市 モノレール延伸に係るまちづくりに関する資料より

上のイメージのように、交通広場の機能を備えた広場を想定しています。この駅前広場や駐輪場の整備などにより、交通結節機能が強化されるとともに、駅勢圏拡大による利用者の増加や利便性の向上が図られます。この駅前広場に関しては、2023年12月に計画に関する説明会が行われたという段階です。

モノレール沿線まちづくり構想(東大和市 武蔵村山市 瑞穂町)の資料より

現在は、路線バスとコミュニティバスを使った公共交通を行っていますが、ルートが多様で複雑、運行距離・所要時間・運行間隔が長い、定時性が確保されにくいなど、利便性に課題がありました。モノレールの駅ができることで、駅を基点とした新たなバスルートの設定などがなされるとしています。

景観イメージ:東京都

上画像は、武蔵村山市内の景観イメージになります。武蔵村山市内では、モノレールの導入空間ともなりうる新青梅街道(上北台から箱根ケ崎までの区間約6.7キロメートル)に関しては、既に東京都が2005年3月に交通渋滞解消の視点から、現在の幅員18メートルから30メートルに拡幅整備する都市計画変更を行っています。そのため、東京都では、新青梅街道のこの区間を5つに分割しての整備を既にはじめており、用地取得や工事を進めているという状況です。この5つ全ての区間の事業終了予定は、2028年度となっています。

瑞穂町にできるJR箱根ケ崎駅との乗り換え駅

図:東京都

上図は、瑞穂町の箱根ケ崎駅前に設置される(仮称)No.7駅の標準横断図です。米軍横田基地の航空制限がかかる区域であり、その制約を満たすため、他の駅と異なり、改札があるコンコース階とモノレールに乗車するホーム階とが同一階にある一層式の駅舎を予定しています。

図:東京都

上図は、JR箱根ケ崎駅側から上北台駅方面を見たイメージ図です。No.7駅を計画しているJR箱根ケ崎駅前は、現在の道路幅員は20メートルであり、モノレールの駅舎を整備する空間として十分な幅員ではないことなどから、東側に道路の拡幅を行って駅を配置する計画となっているようです。

景観イメージ:東京都

JRの箱根ケ崎駅からNo.7駅の方面を見た景観イメージです。 ここはJR箱根ケ崎駅とモノレールとの接続駅となるため、やがて多くの乗り換え客が見込まれるでしょう。

今後の流れと開業のめど

図:東京都

2023年12月の時点では、上図の赤い表示部分まではが終了したということになります。

今後、環境影響評価(環境アセスメント)の手続きとしては「都民等の意見書」の内容を踏まえ「見解書の作成」を行い、「都民の意見を聴く会」を経て「環境評価書の作成・提出」へ進むという流れになります。都市計画に関しては、「関係する住民などからの意見書の提出」を受けて「都市計画審議会」が行われ「都市計画決定」、その後の「事業概要及び測量説明会」を経て「都市計画事業認可」がおり、「用地説明会」を行った後に「工事着工」という流れなります。

工事着工までで約2年と見込むと、その後の工事期間はおよそ10年程度とされていますので、2022年12月の都議会本会議で小池百合子都知事が「2030年代半ば」と答弁をしたように、早ければ2035年くらいの完成が見通されることとなります。

都市計画決定に向け着実に進んでいる印象です。工事着手までにはまだ少しかかりそうですが、2024年のプロジェクトの進展に引き続き注目です。

鎌田 啓吾

(鉄道チャンネル)

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