2023年の新作アニメ「もっと流行ってほしい名作4選」を勝手に紹介してみた【新春企画】

明けましておめでとうございます。オタクのための総合メディア「オタク総研」の編集統括を行っております市井と申します。さて、(毎年言っているような気もしますが)昨年2023年はアニメに大変恵まれた1年になり、のべ280作品以上が放送されました。

【動画】勝手に紹介させていただいた4作品のPV映像

多数の作品が放送されたのはとても良い事ではあるのですが、これだけ多いとどうしても「話題作に埋もれてしまう」作品もあるかと思います。そこで、今回は覇権作からマイナー作まで年間92作品のを観たアニメメディアの代表が「もっと流行ってほしい、見て損はない」と感じた作品を各クール1つずつピックアップして紹介します。

アンケートなどによる客観的な選出ではなく、完全に独断によるただの”推し紹介コーナー”になることを予めお詫びしつつ、もし気になる作品がありましたら年始休みを機にチェックしていただけると嬉しいです。

冬クール『転生王女と天才令嬢の魔法革命』

まずは1〜3月の冬クールから。初っ端の紹介からで大変申し訳無いですが、まずは百合(女性同士での恋愛)系作品から始めさせていただきます。

2023年の百合アニメ界隈といえば百合専門誌「百合姫」の『私の百合はお仕事です』(春クール)や『私の推しは悪役令嬢』(秋クール)、「コミックREX」の『お兄ちゃんはおしまい!』といった”一迅社系”が存在感を放っており、技巧が凝らされた設定の数々に魅せられた方も多いのではないでしょうか。

そして、冬クールに放送された『転生王女と天才令嬢の魔法革命』も他作品に劣らぬ魅力を感じました。本作は魔法に愛されなかった天才王女のアニスフィアと、あらゆる魔法を使いこなす天才令嬢のユフィリアの二人が織りなす「王宮百合ファンタジー」として、小説家になろう原作の作品です。

本作の大きなテーマは「魔法の技術革新」です。異世界へと転生した主人公のアニスフィアは魔法に愛されなかったことから、前世の知識を活かして魔法の代替となる技術「魔学」を編み出します。そんな魔法を使えないアニスフィアと正反対な性格を有する魔法に鍛錬なユフィリア、お互いが持ち寄る孤独感が埋め合わせるように作用し次第に惹かれ合い、二人は力を合わせて魔法の常識を覆す革命を起こしていく…というストーリーが描かれます。

ちゃんと「異世界やってるな」と思わせるようなファンタジー要素を軸に、時には互いを想う百合要素、権力争いといった対立要素をうまく調合した作品だと感じました。ただ、百合特有の作風ですので、一般的なファンタジー作品として見始めると少し合わないと思う方もいるかもしれません。

春クール『江戸前エルフ』

続いて春クール。昨日の大晦日もYOASOBIさんが豪華ゲスト陣とともに「アイドル」を披露しましたね。『【推しの子】』や『鬼滅の刃』が注目を集めた春クールですが、ここでは日常系作品より『江戸前エルフ』を選ばせていただきます。

『江戸前エルフ』は東京都中央区月島を舞台に、異世界から召喚されたエルフのエルダと、高耳神社の巫女である小糸が織りなす日常系作品です。

異世界でオタク趣味に没頭していたことから、現代日本でも引きこもり生活を送るエルダと、エルダの世話をしつつ巫女として神事に取り組む真面目な小糸、世話を焼き焼かれる「凹凸コンビ」が周囲の人々との関わりの中で成長していくストーリーです。日常系作品がゆえに大きな物語の動きは見られないものの、二人の心情や背景などを周囲のキャラクターとともに一つ一つの出来事を丁寧に描きます。

そして本作の舞台である「月島」の魅力が存分に発揮されているのも特徴的で、豊洲などで知られる臨海副都心の片鱗に位置しつつも東京有数の下町として落ち着いた町並みがアニメとなって忠実に再現されています。(名物のもんじゃも出てきたり…)

弊社本社(新富町)からも近く簡単な“聖地巡礼”もしてみたり

加えて、エルダは高耳神社を護る不死のエルフとして「約400年前から月島に住んでいる」という設定であるため、江戸時代の娯楽や歴史といった”豆知識”もたびたび登場。思わぬ学びを得ることがあるほか、皆さん納得(?)の”あるあるネタ”やオタクトークも必見です。

本作の放送日時が「毎週金曜日26時30分」と深夜アニメの中でも最遅クラスであったことから“リアタイ勢”である筆者にとってかなりの癒やし枠でした。

夏クール『AIの遺電子』

夏クールは『デキる猫今日も憂鬱』といった日常系から『好きな子がめがねを忘れた』などの恋愛系(いずれもGoHands)まで個人的に好きな作品が多く、迷いに迷ったのですが『AIの遺電子』を紹介します。

本作は秋田書店「週刊少年チャンピオン」連載マンガを原作とするSF作品です。ロボットが当たり前のように存在する近未来を舞台に、ヒト型人工知能ロボット「ヒューマノイド」と治療する人間の医者を主人公に展開されるSFモノでああるのですが、両者の価値観や考え方の違いを「戦争」「暴力」といった対立ではなく「愛」や「友情」を通じて描くことが大きな特徴です。

また、本作はオムニバスストーリーで展開されることも特徴的で、背景設定などは一貫しつつも話完結型の物語でサクッと見られて、非常にとっつきやすいのではないかと思います。

2023年はChatGPTといった生成AIの急速な成長と浸透で世間を賑わせた1年でした。ChatGPTを開発したOpenAIは次世代のAI社会に向けて「AGI(※)」の実現を推進していることも明かしており、こうした出来事がタイムリーに起こっていたため「人間の感情とは何なのか」といった心理的な側面でAIやヒューマノイドを描く本作を興味深く拝見しておりました。

※汎用人工知能(AGI)…人間が実現可能なあらゆる知的作業を理解・学習・実行することができる人工知能。人工知能研究の最終目標とされることも。

秋クール『ミギとダリ』

そして10月から始まった2023年最後の放送クール、秋クールでは『葬送のフリーレン』『薬屋のひとりごと』を始めとする大人気作品が並び、ここ数年希に見るクラスの名作揃いの3ヶ月間でした。こうした中で「もっと流行ってほしい」という観点で紹介するなら、問答無用で挙げたいのが『ミギとダリ』です。

本作は養護施設に住む容姿そっくりの双子「ミギ」「ダリ」を主人公に、子供のいない熟年夫婦の“一人養子”として招かれ“二人で一人”を演じることから始まるコメディミステリー作品です。
魅力はなんと言ってもギャグとミステリアスの絶妙なバランス。作品としてはミステリーに分類されるため、伏線回収やホラーを彷彿とさせる演出がしっかり設けられている一方、作中のいたるところでシュール過ぎる演出や言動が数多く登場し、その一つ一つがクセになります。

その魅力は作品設定にも現れており、たとえば作中の舞台「オレゴン村」は西洋を意識させる建物と風土ですが、実は1990年代の神戸市という意外性もコメディ要素として作品を彩りました。(ニュータウンという設定)

シュールさとミステリアスさが絶妙にマッチした演出に「なんだこれは…」と独特な世界観へ誘い込まれること間違いなし。特に後半からはミステリー要素も強まりますので、結末もかなり期待して良いと思います!

なお、『ミギとダリ』の原作者である佐野菜見先生は昨年8月、アニメ放送を前に急逝されました。素敵な作品を届けてくれました佐野先生のご冥福をお祈りするとともに、最終回での粋なはからいを手掛けたスタッフの皆様に心より感謝申し上げます。

以上、編集統括が独断で選んだ「もっと流行ってほしい」アニメ4作品でした。エンタメ系として設立間もない矮小なメディアではございますが、こうした作品も取り上げつつ、作品の魅力を存分に伝えられるような情報発信に精進する所存ですので、今年一年よろしくお願いいたします。最後に、2024年も素敵な作品を創り届けるすべての方々へ最大限の敬意と期待を表します。

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