低迷続く日本の男女平等 女性の政治参加へ処方箋は 政治家の日常と若手学者の提言から探る

 世界の男女平等の調査では日本の低迷が続く。特に政治分野が足かせだ。何が必要なのか。育児との両立に挑む女性政治家の日常を追うとともに、フランスの先進事例を研究する若手学者の提言を踏まえ、女性の政治参加の処方箋を探った。

統一地方選の候補 緩やかに比率上昇 しかし政府目標と隔たり

統一地方選の女性候補の割合
男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告の日本の順位

 1947年の第1回統一地方選以降、候補者に占める女性の比率は緩やかな上昇が続く。政府は2018年の「政治分野の男女共同参画推進法」施行を受け、格差是正を後押しする。23年の選挙で過去最高を更新し変化の兆しは見えるものの、目標 には届いていない。

 推進法は国政と地方の選挙について、男女候補者数を「できる限り均等」にするよう各政党に促す。21年の改正では、女性議員の増加に向け、セクハラの防止策を国や地方自治体に求める条文が新設されている。

 23年統一地方選での女性候補の割合は道府県議会が15.6%、政令指定都市を除く市議会が20.6%。当選者もそれぞれ14.0%、22.0%に増えた。だが政府が25年の努力目標とする候補者に占める女性割合35%とは隔たりがある。

 世界経済フォーラムが23年6月に公表した「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」で、日本は146カ国中125位にとどまる。とりわけ政治分野は138位と深刻だ。岸田文雄首相は23年9月の内閣改造で歴代最多タイの女性閣僚5人を起用した一方、副大臣・政務官の女性登用は当初ゼロで、批判を浴びた。

委員会にオンライン出席 東京・立川市議 原由希さん

東京都立川市の自宅で長男をだっこしながらオンラインで委員会を傍聴する市議の原由希さん
東京・立川市議のある一日

 東京都立川市議の原由希さん(36)は長女(3)と生後8カ月の長男の子育て真っ最中だ。長男出産時に約2カ月の産休を取得。復帰後、市議会で初めて、自宅から委員会にオンライン出席した。「私が前例となり、女性議員が増えれば地域の子育て環境はもっと良くなる」と意気込む。

授乳時間確保へ規則改正 群馬榛東村長 南千晴さん

2児を育てながら群馬県榛東村長を務める南千晴さん=榛東村役場
群馬・榛東村長のある一日

 群馬県中央部の人口約1万4千人の榛東(しんとう)村長、南千晴さん(43)は朝6時に起きて、2歳と5歳の子どものご飯を作る。村役場へ出向く前、保育園に送るのも日課だ。「選挙で選んでもらったからには仕事をしたい。子育ても両立できる環境が大事」。そんな思いから村議時代、議会開会中に授乳時間を確保する休憩ができるよう規則の改正を主導した。

クオータ制 導入必要 村上彩佳さん(専修大講師)

インタビューに答える専修大講師の村上彩佳さん

 大学でフランス語を専攻し、高い出生率に関心を持った。背景にあった変化を探ろうと、政党に男女同数の候補者を義務付けた「パリテ法」を研究している。2000年の成立後も改正を重ね、実現できない場合は政党助成金を減額する割合を強化した。下院に当たる国民議会の女性議員は約40%と4倍まで増えた。

 パリ留学時、幅広い世代の女性がいる議場の光景に衝撃を受けた。自分に近い人がいると感じた。子育て政策が手厚くなり、生理用品は生活必需品として税率が下がった。女性が声を上げれば、見落とされていた政策が可視化される。

 日本でも、議席の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」が必要だ。約130カ国・地域が導入している現状が知られていない。18年に施行された候補者数の男女均等を促す「政治分野の男女共同参画推進法」は第一歩として評価したいが、罰則がなければ効果は生まれない。政党は女性候補を真剣に掘り起こし、指南役の「メンター」の導入や供託金の減免などで支えるべきだ。

 地方議会から変化が起こればいい。身近なテーマを扱い、市民の声を吸い取る。そこで経験を積んだ女性が国政へ進んでいけば良い循環になる。

 むらかみ・あやか 1990年生まれ。大阪大で博士号を取得後、パリ第9大客員研究員を経て2020年4月から現職。専門は政治社会学。

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