【能登半島地震】浴衣姿で避難、和倉温泉 「旅館入れない」 記者ルポ

食器が散乱した館内=七尾市和倉温泉の「あえの風」

 七尾市和倉温泉も大きな被害を受けている。七尾市の和倉温泉に近い同市和倉小では、宿泊客らが浴衣姿で避難。風呂に入っていたところで、揺れに遭遇し、着の身着のまま逃げきたという女性客は「金沢まで戻る手段がない」と途方に暮れた。(北國新聞政治部・北脇大貴)

 地元住民によると、和倉小には地元住民や宿泊客ら約1400人が身を寄せていたが、市から避難物資などは届かなかった。一方、客を案内した旅館からは布団や菓子などが届き、避難者で分け合ったという。

 穴水町沖波に住む母親を連れて、家族16人で正月旅行を楽しんでいる途中で被災したという川北町の会社員、田口亮介さん(42)は「体験したことのない揺れに、死んでしまうと思った。津波が来たという話も聞いて穴水の被災状況は気がかりだが、とても行けそうにない」と話した。

 風呂に入っていたところで、揺れに遭遇したという都内のパート従業員、倉橋由香利さん(42)は「北陸新幹線が午後から動くとは聞いたが、金沢まで戻る手段がない。旅館に荷物を取りに行きたいが、建物に亀裂が入っていて、入れるかどうかも分からない」と話した。

 各旅館では、遠方からの宿泊客の対応に追われた。「あえの風」では、外壁が崩れたほか、館内では内壁や調度品が散乱。宿泊客を入れることができないため、ヘルメット姿の従業員がゆがみで開かないドアを蹴破って客室に入り、荷物を運び出した。

 男性従業員は「コロナも収まってようやく、いい状況になっていたのに。能登半島地震もすさまじかったが、今回はそれ以上。いつ復旧できるのか全く分からない」と話した。

 加賀屋では、金沢行きのバスを臨時で仕立てて、宿泊客を次々と送り出した。

 七尾市内の多くのコンビニエンストアでは、商品が散乱したり、レジが使えなくなりして営業ができなくなった。それでも、食べ物や飲み物を求める人々らが集まっており、和倉温泉近くのコンビニエンスストアでは、1日夕方に届いた調理パンや菓子パン、飲み物を訪れる人に無料で渡した。ただ、あっという間に底をついた。

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