年末休みに「バルダーズ・ゲート3」のマルチプレイにドハマリしたので紹介したい【年末年始企画】

スパイク・チュンソフトよりついにPS5日本語版もリリースされた「バルダーズ・ゲート3」。2023年のGOTY(GAME OF THE YEAR)を受賞して話題を呼んだタイトルで、最後の最後に2023年でもっとも熱中したゲームが出てきたと言えるほど、現在進行系でドハマリしています。

ただ、本作は全世界で遊ばれているテーブルトークRPG(以下、TRPG)「ダンジョンズ&ドラゴンズ」をデジタルゲーム化するというコンセプトの元で作られた作品なので、コンシューマ機で遊べる一般的なRPGとはかなり方向性が違っています。とくにTRPGに馴染みのない方は、「プレイしてみたんだけどなんか思ったのと違う……」と戸惑っている人もおられるのではではないでしょうか。

ただ、そんな人にも是非とも遊んでいただきたいのが本作のマルチプレイです。シングルプレイに関しては、ややコアなゲーマー向けの要素が強いので、人を選ぶ部分もあるのですが、一緒にプレイできる知り合いがいる前提にはなるものの、マルチプレイでは万人が楽しめる中毒性があるんです。

■TRPGの遊びの幅を完全再現した圧倒的な自由度が凄すぎる

これはシングルプレイも含めての話となりますが、まず本作の何がすごいのかを端的に説明すると、TRPGの自由度が完全に再現されていること。TRPGの魅力はいろいろとあるのですが、個人的にもっとも面白いと思っているのが“発想”のゲームという部分で、TRPGには文字通り無限の攻略法があるんです。

例えば、ダンジョン内に途中で足場が途切れている道があったとします。遊ぶためのシナリオを作成し、ゲームを進行する役を担う人をGM(ゲームマスター)と呼びますが、ここでのGMは部屋の中に隠されたスイッチを見つけ出して動作させることで、隠された新しい道ができるという攻略方法を想定していたとします。

それに対し、あるプレイヤーは飛行を付与する魔法を使い、あるプレイヤーは飛行できるモンスターに乗り、あるプレイヤーは大きくジャンプするというそれぞれ異なる方法で向かい側に渡りたいと提案しました。全てGMが想定していなかったクリア方法ですが、GMが面白いと思って承認すれば、それは全て正解になります。

ルールブックに書かれていることがすべてではなく、「こういうスキルや道具ならこんな使い方もできるのでは?」とプレイヤーが想像力を働かせ、その場その場のアドリブで攻略法を生み出すことができるのがTRPGの一番の醍醐味だと思っています(やりすぎるとゲーム性が崩壊してしまうので、元々のルールとのバランス感覚は必要ですが)。

「バルダーズ・ゲート3」はまさにこの“発想”による遊びがこれでもか詰め込まれたゲームでして、1つのバトルに対して攻略の自由度が尋常ではないです。

例えばゲームの序盤に訪れることになる、大量の敵が待ち受けているダンジョンでは、初めて挑んだ時は問答無用で全滅してしまいました。どうしようか悩んでいる時に目についたのが、ダンジョンの謎解きギミックだったレバーで開閉する扉です。

これを利用して、敵の一体が部屋に入ってきた瞬間に一人がレバーを引いて扉を閉め、孤立した敵を残りのメンバーで撃破にするという戦術を思いつき、先程の苦戦が嘘だったようにアッサリとクリアすることができました。

こうしたギミック以外にも、敵の進路上に油を巻いて移動を妨害した上で、火属性の攻撃で油を点火して大ダメージを与えたり、水で床を濡らして雷属性の攻撃で感電する床を作ったり、別の入口を見つけてパーティを2つにわけて挟撃したり、幻影を生み出す魔法で敵の視線を誘導している間にこっそりと通り抜け、戦いそのものを避ける……などなど、「これを使えばこんなことができるんじゃないか?」という想像がだいたい実現してしまうのが本当に凄いポイント。

一つ一つのバトルが長く、歯ごたえがあるものになっているので、この発想を思いつくか思いつかないかで、難易度はかなり変わってきます。

■マルチプレイなら失敗する試行錯誤も一つの思い出として楽しめる

なかなか難易度も高いので、一人でプレイしている時の試行錯誤ってなかなか辛く、ドツボにはまりがちなのですが、複数人で通話しながらプレイすると心も折れにくいですし、何より自分だけでは出てこなかった発想が生まれることも珍しくありません。マップのすみずみまで目を凝らしつつ、こうすればいいんじゃないか、いやああした方がいいんじゃないかと、仲間同士で話し合いながら攻略法を考えるのはめちゃくちゃ楽しいです。

マルチプレイ要素のあるゲームは、少なからずそういう楽しみはありますが、本作は選択肢の幅が尋常ではなく広いので、話し合いの重要性がとくに高めになっています。自分のアイディアで煮詰まっていた状況が突破できたりした時は最高に気持ちいいです。

また、本作ではあらゆる行動の成否をダイスによって決定されるのも特徴。任意の選択肢を選べるかもダイスの出目次第で、思うような結果が出ないことも多いので、ストレスと感じる方もいるでしょう。ダイスロールによる失敗を楽しいと感じられるかは、本作に対する評価の分かれ目的なポイントでもあるのですが、マルチプレイだと皆で一緒に一喜一憂できるので、その敷居がグッと下がります。失敗した時はした時で、笑い話として思い出になってくれますからね。

ただ、少しマルチプレイの仕様が特殊で、自分のワールドで作成したキャラクターを他人のワールドにもっていって参加させるようかことはできない点は注意が必要です。実際のTRPGも、他のプレイヤーとのセッション向けに作ったキャラクターは基本流用できませんから(GMや他のプレイヤーの許可が取れれば別ですが)、そのあたりも踏襲されています。一般的なRPGのマルチというよりも、ボードゲームを一緒に遊んでいる感覚をイメージした方が近いかもしれません。

自分は学生時代、TRPGにドハマリしていたのですが、TRPGは「遊ぶ時間」「遊ぶ仲間」「遊ぶ場所」の3つをすべて揃える必要があるというのがもっとも大変な部分でして、どんなに楽しくても歳を重ねるにつれプレイするのが難しくなっていきます(最後の場所は、最近はオンラインセッションという方法でクリアできますが)。加えてセッションがうまくいくかは、GMの手腕次第によるところが多く、GMはプレイヤーと比べて事前準備などの負担も大きいです。

「バルダーズ・ゲート3」は、その一番大変なGMの役割をゲーム側で担ってくれているのでその準備が不要ですし、一人や二人の少人数でもプレイできます。クリアまでのボリュームが尋常ではないので、互いの時間をあわせながら進めていく大変さはありますが、それでもTRPGを実際に遊ぶのに比べればハードルはかなり低くなっています。自分のような「TRPG遊びたいけど人を揃えるのが難しい」人間にとっては、夢のようなゲームと言えるんです。

「バルダーズ・ゲート3」が楽しいと感じられた方は、きっとTRPGの「D&D」も楽しめると思います。もし遊ぶための環境を整えられるなら、是非ともそちらも体験してみていただきたいですね。

(C) 2023 Wizards of the Coast and Larian Studios. All rights reserved. Larian Studios is a registered trademark of the Larian Studios Games Ltd affiliates. Wizards of the Coast, Baldur's Gate, Dungeons & Dragons, D&D, and their respective logos are registered trademarks of Wizards of the Coast LLC


© 株式会社イクセル