【能登半島地震】「家つぶすしかない」 氷見で倒壊、損壊が続出

強い揺れで全壊した民家=氷見市姿

  ●復旧見通せず、住民ぼうぜん

 最大震度5強の揺れに襲われた氷見市内では、建物の倒壊、損壊が相次ぎ、道路の損壊なども目立った。「どこから手を付けようか」「もう家をつぶすしかない」。2日は多くの場所で後片付けが進められたが、復旧が見通せない大きな被害に住民は途方に暮れた。

 市中心部の北大町にある薮並酒店。2日午後2時すぎ、3代目の薮並睦士(あつし)さん(64)は見る影もなくなった店舗の前でたちつくした。「80年ほどの歴史があるが、再開はもう無理でしょう」。倒壊時、薮並さんは妻、弟と店内におり、下敷きとなった。救助され、命に別条はなかったが、片付けようもない店の姿を力なく見つめるしかなかった。

 北大町には民家や商店が立ち並び、玄関のガラス戸の破損が目立った。薮並酒店近くの釣﨑準一さん(74)宅は多くの戸がゆがみ、廊下には段差ができた。壁にも亀裂が入り、釣﨑さんは「とても住める状態じゃなく、手の施しようもない」と肩を落とし、冷たい風が入り込む玄関の応急措置を急いだ。

 石川県境に近い姿の集落では、民家や納屋が倒壊した。うち納屋1棟はがれきが国道160号の1車線をふさぎ、片側通行となった。

 住民によると、崩れた民家には高齢親子2人が暮らしていたが、外出中で無事だったという。近所の花木幸治さん(49)宅は、家の中の物が散乱し、足の踏み場もない部屋も。倒壊した向かいの民家に目をやり、「あちらも自分たちも助かってよかった。集落みんなで協力して何とかしたい」と必死に笑顔をつくった。

  ●神社で鳥居被害

 中心部の神社では玉垣や鳥居などが倒れ、氏子が2日、応急処置に追われた。

 中央町の日宮神社では、みこしが保管されている土蔵の壁は剝がれ落ち、境内や道路に倒れた玉垣や灯籠が散らばった。

 氏子総代の森晨朗さん(76)は「地割れがあり、本殿も沈むかもしれない。どうしたらいいものか」と厳しい表情で語った。

 北大町の八幡神社や宗源神社では鳥居が崩れた。

  ●書き入れ時に打撃

 民宿や旅館、観光施設は断水の影響で休業を余儀なくされ、書き入れ時に大きな打撃を食らった。

 県史跡の阿尾城跡のそばにある民宿「城山」(阿尾)は1日、33人の予約があったが、半数がキャンセルに。同日は客とスタッフが津波に備えて一時避難した。氷を溶かすなどして水を確保し、この日は何とか料理を提供した。2日から臨時休業に入り、佐伯鉄夫社長(65)は「みんな無事でよかった」と安堵(あんど)した。

 旅館「ひみのはな」(姿)も2日から休業し、柿谷宗明支配人(42)は「なるべく早く再開できるよう努力したい」と話した。

 観光施設「ひみ番屋街」(北大町)はテナント1店が営業したが、事実上休業状態となっている。

 市の被害まとめでは2日午後2時現在、建物の全壊2件、一部損壊1件となっている。ただ、確認が追いついていないとみられ、拡大する可能性が大きい。

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