【能登半島地震】避難、眠れぬ夜 続く余震「家壊れ怖い」

体育館で身を寄せ合って一夜を過ごす避難住民=1日午後9時40分、氷見高

  ●凍え、身寄せ合い 氷見

 「今も手が震える」「早く帰りたい」。県内の各自治体が開設した避難所には津波や余震におびえる多くの人が詰め掛けた。真冬に直撃した大地震。夜遅くまで続く揺れに加え、寒さと断水も続き、避難者は毛布にくるまって眠れぬ夜を過ごした。

 氷見市内では21カ所の避難所に一時2千世帯3千人が逃げ込んだ。高台にある市ふれあいスポーツセンターと氷見高には日没以降も次々と避難者が殺到。マットや段ボールを簡易ベッド替わりに、家族が身を寄せ合って凍える一夜を乗り越えた。

 同市幸町の山川猛さん(68)は妻と90代の義母を連れて避難し「家は壊れて、夜を過ごすには怖い。夜は冷え込むし、義母が高齢なので体調を崩さないか心配だ」と心配そうな様子。同市北大町の角口清博さん(73)は「余震があるし、全く寝られんだ」と疲れた顔を浮かべた。

 避難所の限られた暖房では寒さに耐えかね、駐車場や路肩に止めた車で過ごした住民も多く、同市南大町の永田隆雄さん(79)は「なんとか寒さをしのげた。正月に被災したことはなく、これから先忘れることはないだろう」と話した。

 高岡市内では最大86カ所の避難所が開設され、横田小には住民ら約200人が身を寄せた。家族10人で避難した会社員男性(32)は「妻は妊娠中。地震はいつまで続くんだろうか」と不安いっぱいの表情。パート従業員の女性(40)は「家族でおせちを食べて談笑していたら、強い揺れがあってはだしで外に飛び出してきた」と振り返った。

 南星中では、最大で約100人が体育館で一夜を過ごした。木津校下自治連合会の月安幸三会長(73)は「元旦からとんだ災難だ」と肩を落とした。

 高岡市のイオンモール高岡では、トイレの利便性を考慮して避難してきた人も見られた。

 富山市内では最大84カ所開設され、約6300人が避難した。同市四方荒屋の会社員武島慎一さん(57)は海に近い自宅を家族とともに離れ、車で呉羽山を目指した。渋滞にはまって目的地を呉羽小に変更し「津波で家が損壊していないか心配。早く帰りたい」と疲れた表情で話した。

  ●交通混乱、新幹線で足止め

 富山県内では地震の影響で、鉄道など公共交通機関で運休や遅れが相次いだ。北陸新幹線は金沢―富山間で列車4本が線路上に止まり、約1400人が車内で一夜を過ごした。2日の富山駅は北陸新幹線の運転再開を待つ帰省客や観光客でごった返した。

 JR西日本金沢支社によると、列車は地震発生から約11時間後の2日午前3時ごろから順次移動させ、午前4時過ぎまでに全列車が富山駅、新高岡駅、金沢駅に到着した。到着後、列車はそのまま滞在できる「ホテル」として開放された。

 埼玉県から金沢へ観光に来た自営業男性(55)は地震で列車が揺れたとし「脱線するのではないかと思った」と表情をこわばらせた。2日は北陸新幹線の運転再開を受け、富山駅では乗車券を購入しようと長蛇の列ができた。

 地震発生から一夜明けた2日も鉄道は運休が目立った。JR氷見線は少なくとも5日まで終日運転を取りやめる。あいの風とやま鉄道、JR高山線は一部区間で運休が続いた。富山地方鉄道は本線、不二越・上滝線、立山線が全線運休した。市内電車・富山港線は午前10時に運転を再開した。万葉線は2日、運転を再開した。

 県管理の国道や県道では2日午後3時時点で道路崩壊や段差、歩道の隆起などの被害が39カ所で確認された。

  ●羽田事故で欠航

 羽田空港で発生した事故の影響で、富山午後6時半発の羽田行きが欠航となった。富山空港では、手続きをする帰省客らの行列ができた。

  ●エレベーター停止、7人閉じ込められる 新湊大橋、2時間後救出

 1日午後5時半ごろ、射水市の海王町と堀岡を結ぶ新湊大橋の自歩道用エレベーターが停止した。7人が閉じ込められ、約2時間後に救出された。けが人はいなかった。伏木富山港湾事務所によると、地震の影響とみられる。新湊大橋は道路陥没の影響で2日午後4時現在、通行止めとなっている。

 1日の地震以降、ビルや集合住宅でエレベーターが停止したままになるケースがみられる。県内の業者によると、地震直後から通報が相次ぎ、担当者全員が急きょ出勤しているが、件数が多すぎて対応しきれていない。医療機関や介護施設を優先しており、1件あたりの修理にも時間を要しているという。

  ●石川へ緊急調査隊 黒部河川事務所

 国土交通省北陸地方整備局黒部河川事務所は2日、能登半島地震に伴う河川などの被災状況調査を行う緊急災害対策派遣隊を石川県へ向かわせた。職員4人が9日まで活動する。

 砺波総合病院は医師2人を含む災害派遣医療チーム(DMAT)を能登方面に派遣した。

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