京都・清水寺近くの二年坂で火災 住民が消火栓で消火、消防「初期消火の手本」絶賛

二年坂の火災現場に集まった消防隊員ら(2日午後1時15分、京都市東山区)

 正月の1月2日に京都市東山区・二年坂で発生した店舗火災は、天井と壁の一部が焼ける小火(ぼや)に終わり、けが人も出なかった。現場は古い木造住宅が密集する地区で、短時間で延焼する恐れもあったが、近隣の店主らが「市民用消火栓」を使って火を消し止めた。駆け付けた消防隊員は「市民用消火栓を使った初期消火のお手本となるケース」と絶賛した。

 「二年坂で出火」。京都市消防局は1月2日午前11時37分、119番通報を受けた。二年坂は京都・東山のシンボルである法観寺「八坂の塔」や清水寺、高台寺といった有名寺院にほど近く、石畳と沿道の木造建物がつくる古都の情緒が観光客を魅了する。2日は初詣の参拝者も多く訪れ、一帯は朝から混雑していたという。

 火災は、ソフトクリームやコロッケなどを販売する店舗で起きた。「軒先から煙が出てうちの店の中にも入ってきました。『火事だ』と叫ぶお客さんもいて、炎が広がればここも危ないと思いました」。2軒隣の店舗の女性店主はそう振り返った。人々であふれかえる二年坂は一時、騒然となった。

 木造家屋が軒を連ねる二年坂は、火事が大惨事につながりかねない。そのため京都市は2008年、一般人が簡単に使える市民用消火栓を政令市で初めて整備した。高台寺公園の地下に設けた巨大な地下水槽に雨水をためて初期消火や防災に使う重要なインフラだ。

 今回の火災では、近くに居合わせた島拓也さん(51)が現場近くの市民用消火栓にホースをつなぎ、店内に放水した。島さんは地元商店主らでつくる自治グループ「古都に燃える会」の副会長を務め、訓練で機材の扱い方を熟知している。「夏場には暑さを和らげるため、許可を得た上で消火栓につないだホースで石畳に散水している。日ごろから使っているので今回もちゅうちょなく放水できた」と話す。

 他の店主らも消火活動に加わり、ホースを建物の屋上に延ばし、屋根の上からも放水した。結果的に台所付近で燃え上がった火はそれ以上広がらず、その後に到着した消防隊が放水しないまま鎮火した。現場で指揮した消防隊員は「市民用消火栓を生かし、見事な連携プレーで被害の拡大を防いだ」とたたえた。

 市消防局によると、市民用消火栓は一帯に43基設置されているという。

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