社説:能登で震度7 迅速な救助と支援に総力を

 元日の夕方、石川県能登地方で震度7の地震が発生した。広範囲を揺れや津波が襲い、断続的に強い余震も起きている。

 建物の倒壊や土砂崩れ、火災が相次ぎ、多数の死傷者が出ている。交通の寸断や停電、断水などライフラインの被害も甚大だ。

 厳しい寒さの中でもある。人命を最優先に被災者の安否確認と救助を急ぎ、生活の救援、復旧に総力を挙げたい。

 震度7を記録したのは、2018年の北海道地震以来だ。今回の規模はマグニチュード(M)7.6と推定される。逆断層型で、能登地方で記録の残る1885年以降で最大という。

 輪島市では、観光名所「輪島朝市」の商店などが崩れ、大規模な火災で約200棟が焼けた。ビルや家屋が倒壊した惨状は揺れの激しさを物語り、大勢が巻き込まれた。新潟県や富山県など北陸一円でも多くの建物が損壊し、負傷者が相次いだ。

 能登地方は2020年末から群発地震が続き、22年の震度6弱、23年5月の震度6強と次第に大規模になっていた。専門家は一連の活動で引き起こされた可能性が高いと指摘している。

 気象庁は「今後1週間ほどは最大震度7程度の地震に注意が必要」としている。緩んだ地盤に降雨の予報もあり、継続的な警戒が欠かせない。

 日本海側は、東日本大震災以来の大津波警報はじめ津波の警報、注意報で避難が呼びかけられた。輪島港で1.2メートル以上に及び、近隣で浸水被害も出た。

 京都府、滋賀県も一部で震度4に達し、舞鶴港で最大40センチの津波を記録した。沿岸部の住民らが高台に避難した。

 日本海側の地震は、津波の海岸到達の早さが特徴とされ、今回も直後に第1波が周辺に及んだとみられる。素早い避難の在り方の再点検が必要だろう。

 被災者が身を寄せる避難所などでは、寒さ対策に加えて感染症防止が重要だ。高齢者や障害者ら要支援者への配慮や、受け皿の分散化を図りたい。

 正月の帰省、旅行中に遭遇した人も多いとみられ、現地での支援や交通情報の提供が求められる。車中泊など狭い空間ではエコノミークラス症候群になりやすく、小まめな運動や水分補給が予防に有効という。

 岸田文雄首相は自らをトップに非常災害対策本部を設置し、広域の消防や警察、自衛隊の派遣、救援物資の「プッシュ型」輸送を進めるとした。迅速な支援に手を尽くしてほしい。

 震度7に達した石川県志賀町にある北陸電力志賀原発は停止中で、福井県の原発を含め、安全への影響は確認されていないという。

 だが、志賀1、2号機の変圧器で配管が破損して油が漏れ、周辺の放射線監視装置の1割強が使用不可になった。「異常なし」と言えまい。地震列島に立つ原発のリスクを改めて浮き彫りにしたといえる。

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