ファイアフライ、「アルファ」ロケットで衛星を打ち上げも予定外の軌道へ投入 第2段エンジンの異常か

ファイアフライ・エアロスペース(Firefly Aerospace)は現地時間2023年12月22日にロッキード・マーティン(Lockheed Martin)の実証衛星打ち上げミッション「Fly the Lightning」を実施しました。

【▲ ヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられたアルファロケット(Credit:Firefly)】

ファイアフライの「アルファ」ロケットは、日本時間2023年12月23日2時32分に米国カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられました。ロケットの第1段エンジンは打ち上げから約2分30秒後に燃焼を終了し、第1段と第2段を分離。第2段エンジンは予定されていた2回のうち1回目の燃焼を開始し、フェアリングの分離にも成功しました。

ファイアフライはX(旧Twitter)の公式アカウントにて「アルファは軌道に到達し、第2段機体のエンジンは予定通り停止しました。40分後に、ファイアフライの第2段機体は再燃焼を行います」とポストしています。しかし、このあと数時間に渡って最新情報の提供がありませんでした。

打ち上げから約12時間後、ファイアフライは第2段の1回目の燃焼終了後に2回目の燃焼が行われず、予定していた正確な軌道にペイロードを投入できなかったと発表しました。なお、機体との通信は確立しており、ミッションの運用は行われているということです。

ファイアフライはロッキード・マーティンに対して感謝を述べたうえで、原因究明とその解決に向けて顧客や政府機関と協力していくと述べています。

【▲ 打ち上げられた衛星のイメージ図。電子稼働アンテナの技術実証を行う(Credit: Lockheed Martin)】

アルファに搭載されていたのはロッキード・マーティンが開発した衛星で、広帯域の電子稼働アンテナ(Electronically Steered Antenna:ESA)技術の実証を行います。ファイアフライやロッキード・マーティンによると、この衛星では米軍向けに軌道上でのキャリブレーション(較正)の迅速化が新型のセンサーを用いて実証されます。従来はセンサーの電源が入ってから任務を開始できるようになるまで数か月かかることもあったといいます。なお、衛星バスにはTerran Orbital社のNebula衛星バスが使用されています。

なお、ファイアフライは現地時間2023年9月14日に「VICTUS NOX」ミッションを実施しました。このミッションは米国宇宙軍の戦略対応型打ち上げミッションの実証試験として行われ、ボーイングの子会社であるミレニアム・スペース・システムの人工衛星の打ち上げに成功しています。

関連記事:ファイアフライ、米宇宙軍との共同打ち上げ成功 24時間以内で打ち上げ準備完了(2023年9月22日)

Source

  • Firefly \- Fly the Lightning
  • Firefly \- Firefly Aerospace Ready to Launch Alpha FLTA004 for Lockheed Martin No Earlier Than December 20
  • Lockheed Martin \- Lockheed Martin Technology Demonstration To Showcase Faster On-Orbit Sensor Calibration
  • SpaceNews \- Firefly Alpha upper stage malfunction puts payload into wrong orbit
  • NASASpaceflight \- Firefly suffers second stage anomaly on “Fly the Lightning” mission

文/出口隼詩

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